旭駅本屋

SNSが普及しきった今日において、人々はなぜブログを使うのであろうか。

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日帰りでますのすしを食べに行った話(前編)

 冬も終わり春を迎えそろそろ4月というこの3月の下旬、読者の皆様はいかがお過ごしであろうか。就活真っ最中の人、卒業式を迎えた人、旅に出る人、おうちでゴロゴロしている人、様々な人がいると思う。かくいう私も旅行に出る人の一人であった筈なのである。筈というのも、同期と卒業旅行にドライブに行こうと3月頭に決めたは良いものの、予定だの行き先だのなんだので有耶無耶になり結局ご破産となっしまったためである。ここで旅行用の資金をプールしておいた上に、どうせ行くからと個人旅行も控えていた身としては如何ともしがたい状況に置かれてしまったのだ。

 ところで皆々様におかれましてはTwitterの投票機能をどのように活用しているであろうか?筆者は阿呆なので大体こういうごく下らないことに投票機能を活用してしまうのである。

 

 

 これは家で過ごすのも癪だしどこか行くかと意を決したはいいものの、特に行く宛も無かったのでツイの投票で決めてしまおうという非常に浅はかな考えの下投下されたツイである。本記事は、このアホみたいなツイから始まったアホな旅の記録である。

 

 旅の始まりというのは基本的に気乗りしないものである。そもそも旅の面白さというものは旅程を立てるとこで殆ど終了してしまうのでこれは致し方ない側面がある。旅程が無いと言う場合でも、大概はあそこに行ってそこから何時間であそこまで出て云々というのをある程度練ってから行くものである。その練り上げる行程が面白いのであり、故に全てをふっ飛ばし旅に出るのは邪智暴虐の極みとも言える愚行である。

 であるならば、この旅は愚行に他ならないわけではあるが。

 とはいえ、行き先が決まればある程度は構想というものは自然と生まれてくるものである。前々から北陸には行きたいと思っていたので幾らか行きたい場所もある。それらを拾い上げて行くのも手であろう。いや、それより先に並行在来線を乗り潰すべきな気がする。であるならば長野から在来線で行こう。

 と軽く思考を張り巡らせ、東京駅で長野までの1葉券と、富山から東京までの乗車券を購入した。わざわざ東京駅からの200円高い特急料金を払ってるのにさらに520円払うのが癪だったので乗るのははくたかの自由席である。幾ら盛況とはいえ流石に東京駅から乗れば大丈夫だろう。実際東京駅では2席をまるまる一人で専有できる程度の混雑であった。しかし、先に進むに連れてその盛況っぷりを見せつけられることとなった。まず上野で隣におっちゃんが座り、大宮を出ると通路に立ち客が出るほどになったのである。とはいえ乗客は停車駅ごとに大きく入れ替わるので、通しで乗る客自体はそんなに多くないような印象を受ける。実際私も長野で降りるのでその口ではあるのだが。

 

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 高速鉄道網の進歩は凄まじい。6時半に東京を出て8時に長野に着けるのだからなんと素晴らしいことか。4時に出て8時に山梨、群馬だの、そういう旅行を続けてきた身からすれば、時間軸が歪んでいるのではないかとさえ思える驚異的な出来事に思える。

 ここで8:13発の普通妙高高原行きに乗り換え、並行在来線でゆっくり北陸を目指す。

 この列車の終点は妙高高原駅であるため、乗り換える必要があるのだが、いかんせん乗り換え時間が長い。40分はある。幸い駅そば屋があった気がしたのでメシを食いつつ時間を潰せばいいだろう。

 妙高高原に着くまではそう考えていた。

 しかし、世の中は無情である。駅そば屋があった気がしたのはただの思い違いであり、KIOSKさえない駅に40分放置されることとなったのである。おかしい……その昔妙高に乗った時はプラ容器にブチ込まれた駅そばを抱えて乗り込む乗客が見えたというのに……こんなことがあって良いのか……

 

 ちなみに帰ってから知ったのだが、隣の黒姫には駅そば屋があるようである。

 

 朝食も食わずに6時の東京駅にたどり着いた手前、胃は限界を迎え、脳が食料の必要性をしきりに訴える有様である。しかし何かしら食うものがあるかと言えば怪しいものがある。駅前の土産物屋をちらっと覗いてみるも、おやきと書かれた保温器にはおやきの姿はなく、Googleに営業時間内だからとそそのかされて来たスーパーマーケットは営業時間外で、コンビニまで歩くと時間内に駅までたどり着けるか怪しいときた。地方にありがちな万屋に観光客が入るのもいかんせん気が引ける。そもそも万屋が朝9時に開いてる自信も無い。駅前通りにコンビニらしき店構えの店があるからと勇んで向かうも、デイリーヤマザキヤマザキショップ居抜きの整骨院なる限界を限界で上塗りしたかのような施設であった。そもそもヤマザキ系コンビニが撤退するというのは一体全体どうなっているのか。ここは僻地なのか?

 仕方がないので駅の自販機でミルクセーキを買い、直江津行き列車に乗り込んだ。車内で一気飲みをするも、それはとても私の満腹中枢を刺激してくれる代物ではなかった。

 

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 直江津まで来ると北陸の入り口にたどり着いたような認識を覚える。そもそもこの駅から先が北陸本線だったのだからそういう認識を覚えるのも無理はないだろう。しかしこの時の私はそんな感傷にふけっている暇など無かった。第一に食料の確保を優先せねばならない。手元の端末で調べると駅から5分くらいのところにセブンイレブンがあるらしい。わずかばかりの乗り継ぎ時間であるが、ここで食料を得なければ干上がってしまう。小走りで食料を調達し、早足で駅に戻った。

 不運にも丁度改札窓口が埋まっていたのでそこら辺の掲示物を見ていると、"ホームには売店が無いので駅のNEWDAYSで購入してください"とある。

 "駅のNEWDAYSで購入してください"とある。

 そう、この駅にはNEWDAYSがあったのだ。脇目も振らずにセブンイレブンに向かったので一切気が付かなかったのだが、普通に糧食を手に入れるだけならそこまで焦る必要は無かったのである。急いでいる時ほど周りに注意を向ける必要性を強く感じるものである。更には改札窓口を入った先では駅弁の販売までやっているではないか。駅を出る必要はおろか最初から改札を出る必要性すら無かったのである。これはもう生まれの過ちと言っても差し支えないレベルの失態である。

 しかし今更どうしようもないので泊行きの普通列車に乗り込んだ。車内は相応に混んでいて北陸本線時代との差を感じずには居られない。お陰で糧食を一秒でも早く食べたいのに立ち席である。そもそも3連だったのが単行に変わってしまったのであるから混むのは当然といえば当然であるのだが。

 

 途中の名立辺りでなんとか座れたので購入した菓子パンを貪り食い、満腹中枢を刺激していく。食べ終わり一息つくと糸魚川に着いた。

 今回利用している乗車券は「がんばろう糸魚川!復興応援フリーきっぷ」というものである。これは1000円で越後ときめき鉄道全線利用可能なフリーきっぷが手に入り更には糸魚川義援金が送られるという素敵仕様の企画乗車券なのである。この切符を使っているからには糸魚川で降りておきたい。幸いこの列車は新幹線との連絡も兼ねて糸魚川に20分程停車するので、改札を出て軽く駅前をふらつくなどする。

 

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 随所に頑張ろう糸魚川なるスローガンが掲げられている。そうは言うけれども駅からそれなりに歩くのだろう?と考えていた自分はそこまで積極的に散策をしなかったので被災地域を目にすることは無かったのだが、駅前通りの二本となりが火元ということに帰ってから気が付き、後悔するのであった。これだから無計画はよくない。

 再び泊行きに乗り込み終点を目指す。

 

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 終点の泊駅では同一ホーム乗り換えである。便利ではあるが、これのために駅手前で少々停車するのはなんとも言えない。それなら普通に対面乗り換えでも良かったのではないかとも思うものではある。

 ここでは難なく補助席を召喚できたので若干の人権があった。しかしこの列車も混むものである。立ち客もちらほら見えるレベルであり、富山に近づくにつれ補助席付近にも人が滞留し、そこそこ肩身の狭い思いをしたものである。とはいえ、人が乗っていることは喜ばしい限りだ。

 

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 東京駅から6時間47分。目的地富山駅に到着した。思えば最後にここに来たのは地平時代だったか。降りた瞬間見慣れぬ高架駅舎が目に入り、福井か金沢にでも来たのかとただただ驚いたものである。

 

 さて、そろそろ読者諸兄も飽き飽きしている頃だろう。というよりもまず筆者が飽きてきている。キリも良いので残りは後編に回すとする。後編で、いよいよお待ちかねの"ますのすし"とご対面を果たすことになるのである。