旭駅本屋

SNSが普及しきった今日において、人々はなぜブログを使うのであろうか。

アニメ背景と街並みと

 読者諸兄の皆様は今期は何を見ていることでしょうか*1ブレンド・Sアイドルマスターシンデレラガールズ劇場、少女週末旅行、キノの旅、ピングー、今期も様々なタイトルのアニメが放映されております。そんなアニメについてですが、読者の皆様はその背景に違和感を抱いたことはないでしょうか。抱いたことがあると思うんですね。抱いたことがあると思うんですよ。そこで、今回はそんなアニメの背景について考えてみましょう。

 最近はアニメの背景も細かく緻密なものになり、皮肉なことにだからこそ粗に目がいってしまうというものです。特に都市部は描き込み量も多くなり、必然的に粗が目立つため違和感を抱きやすくなるものです。

 

 と、思うじゃないですか。

 

 実は、むしろ逆で、描き込まず、粗を出す方が違和感を抱かれないのであります。今回はその理由について考察していきましょう。

 シュルレアリズムの著名な絵画である記憶の固執を思い起こしてください。わからないかたや思い浮かばない人はググりましょう。リアルで緻密な書き込み、しかしそこに介在する非現実性がある意味一種の不気味さを抱かせるのであります。そこら辺は不気味の谷現象を彷彿とさせます。

 つまるところ、現実に限りなく近いものの現実ではあり得ないものに対してそこはかとない違和感を抱くわけであります。多くのアニメキャラクターに対して大した違和感を覚えない理由のひとつはデフォルメがきついというのもあることでしょう。しかしそうならば新海誠は干上がる気がする。

 しかし、背景は日夜デフォルメがきつくなるどころかリアルなリアリティーを追求し続けております。リアルなを追求すると起こること、それが、建築基準法に合致しない、或いは経済的な合理性のない建造物が屹立する光景が生まれてしまう可能性であります。

 少し考えて欲しいのですが、我々がアニメの背景に関して違和感を覚える時はどんなときでしょうか。恐らくは都市部や丘陵地を描いてる場面になるかと思います。なぜこれらで違和感を抱くのか。それは簡単です。法規が面倒くさいからです。

 住宅地を描くとき、おおよその人は二階建て程度の住宅を広めの敷地にそこそこのゆとりで配置することでしょう。実はこの理屈で家を植えると余程の事がなければ法規を犯すことはないのです。建蔽率容積率を自然とクリアすることでしょう。三階建てくらいで切妻だと斜線制限に引っ掛かるかもしれませんが、これは天空率でカバーできます。旗竿地が出てくるかもしれませんが、棹が細くても既存不適合かもしれませんし、あるいは建蔽率をうまいことやりくりしつつ、駐車場の固定資産税減免を狙っているのやも知れません。然るに住宅地はどう描いても違和感を抱きづらいのであります*2

 しかし翻って都市部はどうでしょう。ちほーはともかくとして、五大都市圏くらいにもなるとどこもかしこも経済性を求め、敷地に法の許す限りの建物を建て始めるのであります。それもそのはず。床面積が大きいほど高く売れるのですから。だからこそ、ケチ臭いビルはエレベーターもトイレも心付けくらいしか設置しないわけであります。なぜなら床面積が勿体ないから。しかし無いと法規に引っ掛かるので作らざるを得ないわけです。

 これと同じような理屈は外観にも現れます。まれによく、細い道に面したビルで4階くらいから上が斜めに切られたビルを見ることがあると思います。斜めに切る起点が道路端なので意外と見逃しがちですが、交差点部や駐車場などの視界の開ける箇所で見てみるとわかるやもしれません。これは建築基準法で決まっているからそうなっているのであります。故に、似たような切り口のビルが続く光景もありがちであります。なんせそれが与えられた容積率をフル活用できる方法であるため、どこもかしこも同じような形に落ち込むのであります。

 そしてこれは、ビルの高さにも表れるのであります。大通りに面した土地に建蔽率100で敷地いっぱいに建てられたビルは、おおよそ9階くらいの高さに落ち着く場合が多いと思いまつ。都市計画で定められた容積率が1000%だと、大体そんな値に落ち着くわけです。地下があればそこも床面積に含まれるわけなのでこうなるわけです。これが法に触れないように経済性を追い求めた結果となるわけであります。

 アニメーションにおける描写において、敷地いっぱいに建てられた15階建てのペンシルピルが出てきたら、或いは大都市で4階建てくらいの新しめのビルが出てきたらどうでしょうか。いかんとも言い難い違和感を抱くと思います。それらは普段何気なく接している街並みと少しばかりずれているからこそ起こるのではないでしょうか。

 建築基準法に合致した建造物を、経済的合理性をもって描く。これこそが、リアルな街並みを描く、不気味の谷を越えるための極意になることでしょう。よく人を描く時、筋肉の配置を気にしろと言うものです。可動範囲、動きかた、どれをとっても筋肉のつきかた次第で決まるので尤もな指南であります。であるならば、建物を描く時に法規制を気に掛けることもまた、重要なのではないかと思うものであります。

 

 つまるところブレンドSの渋谷回で4階建てのビルみたいなのを出したA-1はもう少しマシなビルを描いてくれって話です。

*1:執筆時点で2017年冬季

*2:ただし、急傾斜地、河川際、海岸線は色々と面倒