旭駅本屋

SNSが普及しきった今日において、人々はなぜブログを使うのであろうか。

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1Q38

 帝国の首都であり世界一の人口を擁する東京。二年後にオリンピックを控え、何もかもが目まぐるしく変わろうとしているようであり、何もかも変わらないでいるようにも見える。

 町中の到るところに「Games of the XXXII Olympiad」と書かれた幟が飾られ、壁という壁はオリンピックを祝う広告で埋め尽くされている。競技場の建設や道路の建設などが急ピッチで行われ、何が何でも二年後に開催するんだと言わんばかりに不眠不休で工事が進められている。この前は競技場の建設で過労死する者が出たという程であるから、如何にこのオリンピックが重要視されているかわかる。増加する訪日外国人対策の為に8万人の勤労奉仕団を募集するという報道もあった。将に一億総出でこの帝都でのオリンピック開催を支えんと言わんばかりの体制である。

 しかし、そう諸手を上げて喜んでいるような状況でもない。首長は競技場の位置を決めかねているようで、候補地は数ヶ月で二転も三転もする有様だ。これを見かねてか、国内でも反対意見がちらほらと出てくる。それだけではない。国際情勢は一発触発であり、権益を拡大させたいアメリカと中国との小競り合いが日々繰り返されている。朝鮮半島も平和とは言えず、アジア太平洋地域はよもや一発触発の国際情勢と言って差し障りない状態になっている。

 今日のような情勢で、果たしてオリンピックは開催できるのだろうか。河野一郎氏が存命ならそう言っていたことだろう。

 

 「こんなものだろうか」

 久々に開いた自由帳に、日記ともなんともわからない何かを殴り書き一息つく。そうして、手元にあった飴色の液体が入った瓶を手に取った。ラベルには「トップバリュウイスキー」とある。中国のコメから作られた蒸留酒のような、病的で油のようなホコリのような臭いが鼻につく。私はコップに一杯分ほど注ぐと、覚悟を決めて薬のように飲み干した。

 たちまち顔が赤くなり目が乾く。まるでニトロのような効き目、背後から棒で殴られたような衝撃。次の瞬間、喉元の焼け付きが過ぎて世界が楽しげに見え始めた。

 改めて書きなぐった文字を眺め思う。そもそも一体誰のために書いているのだと。未来の未だ生まれぬ世代のためか、それとも未来の自分のためか。答えを出しかねて暫くぼんやりと紙を眺める。そして、足りなかったものを付け足した。

 「2018年4月1日」

 私は満足げに自由帳を閉じた。