どれだけ時が移ろうとも、駅は中々変わらない。
網の目のように張り巡らされた通路は一つ改良するだけで大工事、いわんや駅舎ともあれば尚の事。駅舎の中に店子の居ない売店があれど、荷物運搬用のトロッコの跡も、荷電ホームも、テルハの痕跡も、消えることは余程のことがなければ無いのである。それこそ、余程時間が立たない限りは。
国鉄解体から35年。首都の拠点駅はほぼ跡形もなく大改装され、最早国電の駅の面影を残す駅というものもなくなりつつあるのではないかという昨今ではあるが、この駅はまるで変わる気配はないのである。
ステーションデパート直結の出入り口。ホームには立呑みの牛乳売店。最近はめっきり見なくなって久しいホーム上屋から吊るされた看板に、乗り換え通路の屋根は鉄骨板張り。
魅力に乏しくなって久しいと言われるが、それでもこの街もこの駅も好きなのはそういうところかもしれない。
今日も又、帰るついでにここに寄ってしまうのだ。
別にまろやか黒酢が飲みたいわけでもない。どちらかといえば気分的に飲みたいのはガラナかもしれない。しかしまろやか黒酢を気軽に買って飲める店をここ以外に知らないし、であるならばここで飲むのが一番のような気はする。ガラナは割とどこでも買えるし、なんなら年数回は大学生協にも入荷される。しかし、まろやか黒酢も、酪王のカフェオレや飲むヨーグルト、飛騨牛乳の特濃なんかはここくらいでしか見ない気はする。いや、厳密に言うならば隣駅の高架下にも牛乳売店があり、そこでも買えるのだが。
「ごちそうさま」
そう言い瓶をカウンターに置いて電気街口に向かう。
特に降りる理由はないが、特に降りない理由もないので降りるのだ。
用もないのにガード下の部品商を眺め、買いもしないのに端末を眺め、更新予定も無いのにPCパーツの価格表を見ては今後の更改計画を立て、即売会直前なのに同人ショップを眺め、千石で捨て値のケーブルを買い、いつものようにフラフラと街を歩いていた。
実際殆ど何もしていないし、何をするつもりもない。
家に居るよりも落ち着くし、この街ほど居心地のいい街は無い。ただそれだけだった。
「この人も居るはずなんだよな」
端末を眺めてふと目に入ったツイートを見て思った。
いつも「オタクタウンなう~~誰か居ないかな~~誰か氏~~!!」などと呟いているFFのオタクだ。齢は近いはずだし、生活圏も被ってそうな気はするのだが、今ひとつ実態のつかめないオタクだった。ツイッターではよくいるタイプだ。
ツイートを追えばイオシスや千石やメロブやパソコン工房を見ているし、なんならどっかで会ってそうな気もするが、かといって探す気もしないし何よりアポも取っていない。アポを取ってみても良い気もしたが、別にそこまでの仲でもないので傍からみて居るのかぁ、くらいに思ってはいた。
が、それが数ヶ月続くとなると別だ。
そろそろ素性というものが知りたくなるものだ。
「おっ、らくがん氏もオタクタウンなのか!オタクタウンなう~!」
意を決して呟いた。
呟くとともに気力が無くなった。
人間というもの、他人と応対するのに著しくエネルギーを消費する気がする。コミュ障おばけは一体全体どうなっているのかと時折思う。
気力を使い果たした。今日はもう帰ろう。
やることもなく、何かあるのではと芳林公園のベンチで一服して探していたのだが、腰を上げて力なく駅の方に向かった。
ジャンク通りから神田明神通りに入った辺りでリプライが飛んできた。
「おっ、良いですねぇ!シリコンハウスおるんですが、そちらは?」
オタクタウン違いだった。
「ちょっと3時間位掛かるところにおります」
そう返信して帰路についた。
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、コミケ帰りに小説の方が面白いと言われたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので、適当に創作に挑んでみた所存ですw
以下、みんなへのメッセジをどぞ
主人公「(こいつ)駄目だな・・・」
らくがん*1「アイアンマン!(ガン無視)」
では、
主人公、らくがん、俺「皆さんありがとうございました!」
終
主人公、らくがん「って、なんで俺くんが!?改めまして、ありがとうございました!」
本当の本当に終わり
*1:創作で名前つけるときに浮かばないとお菓子の名前をつけたくなると思う。多分そう。きっとそう。ネコぱらだってそうだった。