旭駅本屋

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松川温泉 (1)

筆者はキレていた。

2022/01/29

筆者は大宮駅に来ていた。
週末パスを買ったは良いが、特急券と乗り越し分の乗車券を買っていない。なので大宮駅の新幹線乗り換え改札前の窓口で発券しようと考えていた。だもんで出すきっぷは決まっている。窓口でうだうだと長話をしている客がいた。よく聞き取れないが自分がなんのきっぷをどう買えば良いのかわかってなさげでだる絡みをしているようであった。それに加えて列に一人いた。時間は微妙にあるが、微妙でしか無い。微妙に長引かれると最悪乗れなくなる。

一つしか開いていなかった窓口が2つになった。自分の前に並んでいた人が券を買う。前のだる絡みをしている客よりは早くきっぷを出して列から抜けていった。

「自由席で盛岡まで。乗車券をくりこま高原から盛岡まで」

ピンときて無さそうな駅員に週末パスを提示して、中途半端な乗車券と特急券を出してもらった。最初の客はまだきっぷを買っていた。

3枚重ねて乗り換え改札を通る。

旅の始まりである。

 

 

 

盛岡行きのやまびこ51号は結構空いていた。駅弁でも食いたいというのはあったが、6時台ともなると駅弁自体搬入されていない場合がほとんどで、駅弁屋は閉まっており、ニューデイズにもそんなものは置かれていなかった。仕方がないのでのり弁にぎりましたと題したクソデカおむすびを買い、食った。ほどほどに美味い。おにぎりのボリューム感ではないが、手を汚さずに食える辺りちゃんとおにぎりしている。

最近新幹線に乗ったばかりでトランヴェールを読む気にもなれず、コートを被って寝ることにした。

 

 

目を開けると白松がヨーカンの看板が目に入った。仙台だ。仙台で降りて駅弁でも買えれば良かったのだが、停車時間が長いのは古川と北上だけだったので何も出来なかった。

古川で長時間停車する合間に何かホーム上の売店でも見ていくかと列車から降りるも、待合室以外は何もなく、何も出来なかった。

 

北上で4分停車時間があるはずだった。

何故か途中で抑止を食らい、元々が臨時列車のカラ待避だったためか1分も止まらず即座に北上駅を発車していった。売店で何か買う、買わない以前にホームにすら降りれず、無になっていた。

 

新幹線は早い。最優等種別ではないのに盛岡まで3時間掛からず着いてしまう。
途中で合流したK特急氏と平戸田氏と盛岡駅前を徘徊していた。
バス用のSuicaを買いたいと言う平戸田氏のために、駅前のバス案内所に来ていた。

ここで乗車券も買えるらしい。券売機を叩いて出す方式だった。発は盛岡駅前のようで、行きはバスセンターから乗るつもりなので具合が悪い。そんな中目ざとく平戸田氏がバスカードの存在に注目していた。ちなみにバスカードは今月末で販売を終了するらしい。今後はSuicaを導入するらしく、入れ替わりにバスカードを廃止するようだ。そしてそのバスカードであるが、当然バスカードなので松川温泉まで行けるというわけである。更にはバスカードなので当然のように1~2割くらい購入額に比べて利用可能額を盛ってくれている。これは使わない手はない。

3000円券と5000円券を買い、合計9000円分の利用権を手にした。松川は4人で向かう。つまるところ、これで一人あたり250円浮くという算段だ。中々良い。

 

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中心街と見られる商店街を通って川徳に来ていた。時間があり、特に行くところが思い浮かばないのであれば地場の商業施設に行くべきである。筆者は一度来ていたが、ほか二人は来たことが無かったので巡検しているというところだ。

ここでデパ地下を拝見し、屋上を拝見し、玩具コーナが生きている様を見て、赤鉄鉱氏と合流し、退店した。店内は人もそれなりに多く、玩具コーナのあるフロアは特に結構子供がいたこともあり、まだまだ長く残りそうな雰囲気をしていた。

 

 

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「どっか行く場所決まってるんですか?」という赤鉄鉱氏の問いかけに「決まってはいないが気になっているよね」と言ってしまったがために、岩手銀行赤レンガ館に行くことになった。辰野金吾氏の設計の銀行で、2012年まで現役の支店として利用されていたらしい。現役時代のカットは館内で見られるビデオなどでちょくちょく映るが、語彙力を失う凄みがある。現在の竣工時の姿に極力近づけた内装とは異なる、華美な建物ながらも現代的に、実用的に、所々装飾たる装飾を捨てながらも更改して使い続ける様は大変好ましいものだった。使う側からすれば多分不便なんだろうけど。

 

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どこをどう切り取ってもとにかく映えた。とにかく綺麗だった。

盛岡出身の後輩が「あそこはめっちゃ良いっすよ」と言っていたがよくわかる。入れる範囲は結構広いし、結構撮れるし、何よりも綺麗。メチャクチャに良い観光スポットだった。

 

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そんなに広くないはずの館内を1時間程度かけてじっくり拝観し、12時半頃にやっと退館したのであった。

懸案は飯である。ここで食いっぱぐれると後がない。というのもバスに揺られて松川温泉に直行するからだ。なのでできるだけ供食が早くほどほどにうまい飯を食う必要がある。ここで盛岡名物の諸々を食うという案は消え去った。バスセンター近傍に全蓋があったので、全蓋で何か飯でもと徘徊した。Googleの評価の高いラーメン屋はあったが、悲しいことに混んでおり、どうにもならなそうだった。パンを食うか、喫茶店ナポリタンを食うか議論がなされた結果、別のラーメンを食べることになった。

全蓋から外れて若干バスセンター寄りに歩いたところにある店に入り、昼食とした。

 

まあまあ美味かった。

昼食のラーメンは良い選択だったのか、バスセンターには15分ほど余裕を持って到着した。余裕はあればあるだけ良いが、バスセンターは絶賛再開発中であり、プレハブの待合室と扉がメチャクチャ重いトイレくらいしかない中でバスを待った。無である。

 

 

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やがて普通の路線車が来た。

これに1時間半くらい乗って八幡平までまず行くのだ。結構つらそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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疲れからか、睡眠不足からか、爆睡していた。爆睡していたのですぐである。

雪の積もる中降ろされ、目当てのバスに乗り換えた。TSD40、トラックシャーシにバス車体を載せた四輪駆動のバスである。

現在はここだけになってしまったボンネットバスを利用した一般路線バスということで矢張り高まるものがある。車内はワンマンなのに車掌用のスペースがあったりと、昔の面影が垣間見える。運賃表はLCDで新しく、運賃箱は今後入るらしいSuica対応のためかICカードリーダが搭載されている。座席は見かけ通りにズブズブ沈み込むタイプの奴だった。ほとんど座席が埋まったところで発車した。

速度はそこまで早くない。早くない割には結構エンジン音がうるさい。登坂だからだろうか。しばらく走り、川を過ぎるとヘアピンカーブを連続して曲がって登っていく。グイグイと登っていき、しばらくすると松川温泉の入り口にたどり着く。

松楓荘口停留所で「松楓荘へ行かれる方はここで降りてください」と運転手に言われる。ちなみに泊まるのは松楓荘である。我々はガン無視して終点まで乗ることにした。

 

 

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松川荘口を過ぎて松川温泉停留場に着く。途中で降りた数人を除いてほとんどの客は松川温泉で降りていった。どうにも峡雲荘に泊まるらしい。というのも、我々4人を除き皆峡雲荘に吸い込まれていったためだ。我々はどちらかといえば狂人だったのかもしれない。バスを追って転回所に来ていた。

 

 

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GoogleMapで見える峡雲荘の左上にある意味ありげなスペースが転回所になっている。バスが止まっていたので皆で囲んでパシャパシャしていた。ウテシが降りてきた。どこから来たんだい?と聞かれたので色々と雑談をした。

 

折返し便が出るまでまだ時間があるからと我々は宿屋まで歩いて向かっていた。狂人なのかもしれない。加えて10分くらいで来るからとバスを待っていた。本州だから大して冷えないだろうと完全に装備を誤ったため、めっちゃ冷えていた。特に耳が酷い。フードはなく、耳あてもなく、耳なし芳一待ったなしという趣だった。

 

 

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辺りが暗くなり始めてISOを上げて待っていると、爆音を鳴らしながら下ってきた。

フォグランプに加えてヘッドライトを点けて薄暗い中進む様はメチャクチャカッコいい。ちなみに乗客は0人だった。なんか悲しい。

 

 

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松川温泉は秘湯に分類される温泉である。秘湯ビールが売っていたので恐らくはそうなんだと思う。着くまではバスで行ける普通の温泉宿だと思っていたのだが、着いてそうそうここは僻地にある秘湯と言って差し支えない温泉であることを理解するのである。

松楓荘には岩風呂というものがある。岩の中に風呂があるというものだ。吊橋を渡り、屋外の狭い脱衣所で服を脱いで入るという本格仕様だった。そのあまりにも本格的な仕様に我々は極度冷却されていた。風呂桶は凍っていた。ケロリンをパキパキ言わせながら板から引っ剥がす。脱衣スペースと共用のかけ湯スペースでじゃぶじゃぶとかけ湯をしていく。白濁した湯はぬるいとも熱いとも言えないなんとも言い難い具合だった。内湯なら最高だったと思う。日暮れで外である。外に出られなくなる温度だった。ちなみに湯口自体は50~60℃くらいありそうな雰囲気だったので、バチクソ冷えた結果らしい。温泉自体は加水も無くかけ流しか、色は濃く、硫黄臭がふんだんにする良い風呂だった。ただし冬の夕暮れに入るのは全くオススメしない。

岩風呂ですっかり冷えた我々が目指したのは内湯の中でも熱めと言われていた方の風呂である。奥の方にありますと伝えられたが奥の方は真っ暗であった。「風呂ならこの先にあるよ」と座っていた女性に言われ、たしかに脱衣所があることに気がついた。が、電気が一切点いていない。点いていないは厳密には嘘だ。小さいランタンが置いてある。後はろうそく。ろうそくの灯りを頼りに浴衣を脱いで脱衣かごに放り込んだ。寒い。ちなみに浴室も暗かった。浴室にも電気は無いことはないがランタンだけである。暗い。足元に気をつけながら一歩一歩足を進めていく。温かい湯だった。快適かは微妙だが。

暗い中で湯に浸かり、江戸期の入浴はこんな感じだったんかなぁと思いを馳せていた。不便になった時、先人の生活に思いを馳せるのである。蛍光灯最高!LED最高!ランタンは湯気を照らし、そこにカランがあるのか無いのかすらもよくわからなかった。かろうじて手すりはその存在が理解できた。雪雲に覆われ月明かりさえない寒空の中、4人でワイワイ風呂に浸かった。

 

風呂から上がり夕飯を食った。夕飯はイワナの塩焼きとすき焼きがメインのものだった。我々はイワナの刺身を追加で頼み、イワナの骨酒を頼み、ひたすらにイワナを食っていた。

ちなみにK特急さんは骨すら残さずイワナの塩焼きを完食していた。

 

 

飯を食い終わり、30分ほど部屋で休息を取ったあと、手前側にある内湯へと向かった。体を清めるためである。別に他の湯が不潔だったとかそういうアレではない。石鹸が無かったのである。あったのかもしれないが少なくとも視認できなかった。なので石鹸で体をゴシゴシするために手前側にある内湯へと向かった。

手前側にある最近できたらしい内湯は普通だった。普通というのは、脱衣スペースが屋内にあり、浴室が蛍光灯で照らされ、シャンプーとボディーソープがあり、体を洗うことが出来るということに他ならない。我々は樋から湯を汲み、桶に湯を張り、ボディーソープで体を清めた。樋から湯を汲んでいるのはなんかこう色々と凄いが、カランはなく樋だけなのでこうする他無い。なんだかんだでシャワーのように水圧に悩まされることもなく、自動的に止まる水栓のようにキレながらボタンを連打する必要もなく、そう不便するものでもないので実務上困ることはなかった。実務上困ることになる可能性としては、キチガイが樋で体を清め始め汚染されるなどが考えられるが、そういう人は多分こんなところまで来ないだろうから問題ないとは思う。

体を清めて浴槽に浸かる。湯はもはや見慣れた白く濁ったものである。意外と深い。そして意外と熱い。奥のほうが熱めなんだけど今日は変わらないかもね、と言われていたがそんなことはない。手前の内湯のほうが明らかに熱かった。43℃くらいある内湯に浸かる。良い。温泉はこういうのがいい。最高だ。硫黄泉なこともあり、辺りに硫黄泉らしい香りがムンムンしているのもよい。

43℃くらいあるので長くは浸かれない。ぬるめに切り替えていき、長湯した。ぬるめのぬるい理由は加水にあるらしく、普通と比べて露骨に色が薄かった。

「ぬきたしはちゃんと全ルート終わらせたんですか?」と貸主が借り主のK特急さんを詰問していた。やっていないらしい。筆者はぬきたしをよく知らない。性的な青い鳥*1が出てくることくらいしか知らない。

エロゲに造形の深いオタクがエロゲの話などをし、筆者は静かに湯に浸かっていた。

*1:Twitter Birdではない