旭駅本屋

SNSが普及しきった今日において、人々はなぜブログを使うのであろうか。

RSS

 

最果ての鉄路 (5)

「タウシュベツ行きません?」

「あぁ~いいっすねぇ~」

「じゃけん帰り行きましょうね~」

 

という会話があったのが一月ほど前。橋埋もれてるし雪やばそうだし止めたほうがいいっすよと先方に言われて止めたのが昨日のことである。ツアーは止めたは良いものの宿とレンタカーの予約は生きたままなので、帯広に行かねばならない。昼頃出れば間に合うと言うので、昼出ようというものだ。

 

2022/01/11

久々に8時間ゆっくり寝ることが出来た。

ラッセルは待ってはくれない。案外時刻表のとおりに来る。なので睡眠はやや犠牲にしつつ回っていたのだ。実際収納は「睡眠不足だと頭痛くなるんですよね」とロキソニンを飲みながら撮っていたりした。筆者はそこまでではなかったが、それでも矢張り8時間寝れないのは若干パフォーマンスが落ちる。落ちてもなんとかなる程度の行程で組んでいるのでどうとでもなるが、矢張り寝たいものは寝たい。だから一人になったタイミングで寝れるだけ寝ようというのだ。明日は明日で糠平温泉に3人仲良く一泊だ。どうせ8時間は眠れなかろう。

 

 

f:id:Ithikawa:20220118223338j:plain

JRインを出たのは9時頃であった。昨晩GoogleMapでJRインの近所をグリグリ見ていて気になったスポットに訪れていた。清華亭というらしい。

 

 

f:id:Ithikawa:20220118224035j:plain

f:id:Ithikawa:20220118224446j:plain

f:id:Ithikawa:20220118224511j:plain

洋室と和室が1室ずつ、土間と手洗いが脇の方にあるという随分小さい建物であった。
和室と洋室は結構ガチな作りで、どちらもガチなのがすごいところである。現代の日本家屋みたいな和洋室のそれではなく、トラディショナルな和室と、明治頃の欧風建築の洋室そのものをそのまま持ってきたような、結構どぎつい組み合わせである。住んでいなかったらしいので別に不自由はしないだろうし、和室と洋室それぞれ別々で使うなら不自由はしないし中身がガチな分合理的なんじゃないかとは思う。

元々札幌が原野な頃、国鉄のレールすら無かった時代から場所を移していない建物とのことで、豊平館と比べても引けを取らない貴重な存在らしい。周囲が都市化して肩身が狭くなるというのはある意味ではちいさいおうちを思い出す*1

 

 

f:id:Ithikawa:20220118230837j:plain

いい頃合いになったので札幌駅に向かった。

帯広で大雪と聞いていたので気になっていたが、なんということもなく列車は平常通りに動き続けていた。駅構内の弁当屋で迷いに迷い幕の内弁当を頼んだ。幕の内弁当は実際そこまで好きではないのだが、駅弁の本旨は幕の内弁当にあると思っているので頼んだというところだ。実際問題特色ある駅弁に押されて普通の弁当っぽい幕の内弁当は逆にレア種になりつつある気がする。無くなる前にというのは多分どれも同じで、なくなることは無さそうな気もするもののそれでも気になるからということで幕の内をセレクトした。あたためますかということでレンジでチンしてもらう。北海道らしい。KIOSKで茶を買い袋に突っ込んで、そのままホームに上ってとかちの自由席を抑えた。

 

幕の内も中々美味かった。札幌駅弁は大体何食っても美味い説はありそうだ。

 

 

f:id:Ithikawa:20220118231750j:plain

あれだけ寝ていたのにスマホを手に途切れる電波に身を任せてウトウトしていたら帯広である。新得手前の平原を下る様は見ておきたかったのだが完全に寝ており何も記憶がない。実際若干眠いが起きて藤丸と六花亭に行く使命がある。眠い目をこすりながら降りた。

 

降りて階段の目の前が改札であるのが帯広の特徴だ。ホームの島ごとに改札が別れている。改札を出て、適当にコインロッカーを探していた時、ふいに置かれたホワイトボードが目についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ithikawa:20220118234210j:plain

事実上の死刑宣告だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六花亭は商店街やら藤丸百貨店がある方にある。駅からそう遠くはないので余裕で歩ける。大通りを避けて行ったらそういう飲食店が軒を連ねていた。所々テナント募集の張り紙があるあたりに悲しさがある。道内第四位の都市とは言えというところか。

六花亭の帯広本店は結構栄えていた。他と比べればという一言は要るかもしれない。2階にある喫茶コーナーでは待つことなくテーブルに通された。帯広地区限定のメニューというのといちごジュースを頼んた。

出来上がるのに20分かかるらしい。都合がいい。端末とにらめっこして、善後策を考えながら挑んだ。こういうときが腕の見せどころというものだ。

LOVE北海道フリーパスの有効期限は今日含めて2日あった。今日どこかに行き、泊まり、札幌に戻ってくるみたいな行程であれば十分いける。明々後日には小樽港から新潟港にフェリーで抜けられる。まずJRの公式サイトを確認した。各方面の運休列車が列挙されている。道南なら雪も積もるまいと思っていたが晩の北斗は運休するという。函館に逃げるルートはどうも難しそうだ。フェリーの出発を早めることは出来まいかと新日本海フェリーの公式サイトで予約変更フォームを叩いてみるも、取り扱いがありませんと表示された。はて運休日かと配船表を見てみたがそんなこともないらしい。よくよく見てみると今日明日は小樽発新潟行きが運休らしい。幸い明々後日は動くので予約は生きていたということのようだ。

帰りを早めるべきかと日航の公式サイトを見る。

35k。

フェリーの払い戻しで20k戻ってきたとして、この値段なら札幌二泊のほうがまだ安い。大人しく札幌観光が安牌だろうか。

 

暫くしてきむたつ氏とK特急氏より連絡が入る。宿とレンタカーの予約を取り消すとのことであった。実際明日運休する予定の列車に乗らないと帰れないというので、やむを得ない判断だと思う。

 

 

 

f:id:Ithikawa:20220118234926j:plain

飯はふわふわでおいしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ithikawa:20220118235944j:plain

小雪が舞う中帯広駅に戻った。一足先に芽室に来ていたきむたつ氏と、札幌から特急でやってきたK特急氏と合流するためである。合流し、今後の策について意見を交わした。結論はこうだ。

 

「次の特急で帰らないと帰れなくなる」

「とりあえず指定取ろう」

 

ちなみにK特急氏は数分前の特急で着いたばかりなので本当にとんぼ返りも良いところになってしまっている。飯食ってないんだよねと言われたので「パイやハヤシライスもありますし、六花亭おすすめですよ」と六花亭を猛プッシュしていた。

筆者は再び帯広の市街地に向かい歩いていた。今度は一行としてである。K特急氏ときむたつ氏は六花亭に向かっていた。筆者は藤丸である。地の百貨店であれば行くほかあるまい。

 

f:id:Ithikawa:20220119000420j:plain

道東唯一の百貨店となった藤丸百貨店であるが、規模は結構大きかった。

ETR651氏より事前に棚がスカスカであるとの言葉を頂いていた*2が、最盛期の清水屋よりは遥かにマシであり、「これくらいでは誤差では?」と思えてしまう。とはいえきらびやかに光るネオン装飾や吹き抜けのあるレストランフロアの飲食店テナントがキャパの半分もないというのは寂しさを際立てていた。吹き抜けの上のフロアが帯広市の施設に貸し出されているのもなおのことである。しかしその程度で済んでいた。なにもないところに衝立でバリケードを作り「催事準備中です」と張り紙をしているわけでもなし、照明を間引いているわけでなし、本当に何一つ商品の並んでいないガラッガラのショーケースがあるわけでなし、配置換えしたのに什器で汚れたリノリュームをそのまま放置するでなし、まだまだ十分に百貨店していた。

地下でワインを買い、15分前だからと駅に戻った。こいつを逃すと明日の午後まで列車がない。這ってでも乗りに行かねばならんのだ。

 

 

列車の中でもああでもないこうでもないと善後策を考えていた。

その中で下した結論が「羽田へ逃げる」である。

削れてて売るに売れん株優いらんすかね?と結構前に言われていたことを思い出し、列車の中で株優の取引を行い、万単位で航路が安くなるしこれならと羽田に帰ることを決断した。株優代含めても20k程度である。これなら当初想定の新潟航路と宿代よりも安くなる。新潟は週末行けばいい。

きむたつ氏と同じ便を予約し、「俺はどうすっかなぁ」と明日のスカイマークを予約しているK特急氏よりひと足早く帰ることになった。

K特急氏も一応カウンターで状況を確認するということで、3人揃って空港に来ていた。K特急氏はスカイマークのカウンターに、筆者は日航の手荷物預け入れ機と格闘していた。

ベンジンが機内預け入れもできないことを確認し、キャリーバッグからベンジンを取り出す。

「船で帰る予定だから気にしてなかったんだよな」

ボトルを取り出したカバンをベルコンに放り投げる。ベンジンのボトルはカウンターの人に渡して処理してもらった。

K特急氏が戻ってきた。「「我々は動きますので」と言われた」とのことであり、つらそうだった。そのまま新千歳空港に泊まるという。明日列車が動けば小樽観光にでも行くわと言っていた。

一緒に晩飯でも食おうという話になり、空港でラーメンを啜る。

うまかった。

時間は余り余っていなかったが、土産の酒を買い、保安検査場に向かった。

ポケットの中の金属をトレーに放り投げ、カバンからPCやらなにやらを放り出し、羽織っているジャンパーをトレーに放って金属探知機を通る。最近は羽織っているものも投げないといけないらしく手間が大きい。

なんか引っかかったらしい。

ハクキンカイロだ」とまるで本物はあんま見ないみたいな感じで声が上がっている。ああ。そういえばコイツもそうか。

「これは預け入れも機内持ち込みもできない荷物です。廃棄しますか?」と聞かれたのではいと答えた。さらば樋口。

 

 

 

帰りの機材はA350だった。実のところ初めて乗る。
普通席にもモニタがあるのは地味に嬉しい。元JASの777を思い出す。あれはあれで嬉しい機材だった。機内コンテンツは当時のそれと比べて結構充実していた。JAL系の動画やら映画やらが視聴できるらしい。カメラも脚の後ろにあるだけではなく、尾翼にもあるという。尾翼のカメラの映像は見たことがなかったので、せっかくなので見てみることにした。

暗い中ではあるものの、白い機体と色鮮やかな灯火で飾られた滑走路や誘導路がいい具合に映っていた。ゲームの後方視点みたいな具合だ。中々に面白い。

窓についた雨粒が真横に流れながら離陸していく。雲が低い。結構揺れる。

雲の中に入ると氷の塊か窓がバコバコ叩かれる。結構揺れる。

 

離陸してからは別にカメラは面白くないので、JALが作ったっぽい機内コンテンツの動画を見ていた。色々な土地に旅に行く奴だった。コト消費をメインに据えているのか、そういう感じの内容だった。金沢回だったかであった案内人の人に黒文字楊枝を見せられた時の「黒文字楊枝ですね!」「よくご存知で。お茶をやってたりするんですか?」「いえ、機内で出すので」のやり取りには流石に笑ってしまった。

4回分程度あり、尺としてはそこそこ長いので見終わる頃にはシートベルト着用サインが点いていた。

離着陸双方で結構揺れた。明日から全国的に荒れ模様というのも納得である。身を持って理解らせられていた。

 

 

無事に東京国際空港に辿り着いた。

ケツのほうの座席を取ったので明日への翼オーケストラバージョンを浴びながら降機した。あれは最高だと思う。旧親の顔ビデオと同じくらい好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ 

 

11日中に帰っていて良かったとされる。

*1:尤もあれは最後には曳家していたが

*2: https://twitter.com/ETR651/status/1366239017700794372