旭駅本屋

SNSが普及しきった今日において、人々はなぜブログを使うのであろうか。

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三連休(1)

 

羽田空港に来ていた。
NH571に乗るためである。千歳で乗り継ぐ方が時刻表の上では早いのだが、千歳に行く飛行機は当然滅びていた。なんせ雪まつりの季節だからだ。然し稚内行ともなると具合は異なるらしい。一昨日見たときですら株優の枠が余っていた。あれは満席に近付くと無くなるっぽいのでまあまあ席は余っているのだろう。シートマップを見た限りでは一応それなりには埋まっているようだった。いつかの暴風雪の時に千歳から乗ったJLの方が余程空いていたというものだ。とはいえナローボディーでこの路線でガラガラとなるとそれは相応に撤退の二文字が頭に浮かんでくるので、今くらいの乗車率の方が精神的にも良い。

NH571は10時台なのでそこまで早起きして羽田に向かう必然性は無い。当社比ゆっくり向かったがそれでも2時間以上前に着いてしまった。稚内着は12時過ぎ。機内でスープ片手に昼飯を食うのも悪くは無かろう。空弁屋を物色し、いうても安牌だからと佐藤水産の石狩鮨を買った。行くのは北海道だが千歳ではないのでこれでも良いだろう。ちなみに値段で選ぶならやまやのうまだしおにぎりが値段と味が良い具合なのでオススメだ*1

旅行の初日というもの、特に何かできることはない。荷物になるものは極力買いたくないところだし、そうでなくても財布の具合も勘案するに初手で買いすぎると後が厳しい。何よりまだ計画は固まっていない。出費の総額もわかったものではない。然るに空港ターミナルにある店を冷やかしたところで何もできず、一人勝手に冷えていた。暇だからと意味もなく2タミを一往復し、ついぞやることが無くなったので仕方なしに保安検査場を抜けた。

保安検査場の先にも店が幾つかある。たいていは赤いBLUE SKYかANA FESTAであるが、羽田はNHとJLでターミナルが分断されているのでこちら側にあるのは基本ANA FESTAである。余談だが飲料と空弁は両社売店でも販売しているので、モノを選ばなければこちらで買っても良いと思う。さてそんな両社の売店以外にあるものと言えばそう、伊勢丹だ。なぜ伊勢丹があるのかは筆者はよく知らない。ただ保安検査場を楽々超えるような人間に向けて商売しているから利益率が高いんだと言われたら多分勢いで納得すると思う。実際運賃は相当低廉になりかなり大衆化したとはいえではある。

セールと書いてあったので覗いてみたが、セールしてる値段でこれかという値札だったので踵を返して搭乗口へと向かった。

 

搭乗口に着いたはいいが結構早かった。1時間くらい時間が余っていた。空港で暇をして、空の上で暇をして、それでも地べたを這いつくばって進むよりは余程早いと考えると止むを得ない時間だとも思う。結局羽田までの電車の中でできなかったブルアカのデイリーを消化しつつ、この先の予定を検討していた。

稚内便で帰ることはできる。株優はNHのを二枚仕立てたので、NHなら株優価格で乗れるというのもある。旭川便や千歳便は選択肢として浮かんだものの、座席の用意が無かった。時期的に仕方あるまい。そうなってくると選択肢は二つ。ジベタリアンになるか、船に乗るかだ。

船は船で選択肢は3つある。帰る場所的に正確には5つくらいは選べるが、新日本海は選んだあとがつらいので今回は選択肢にはしなかった。今調べてみたら元々乗れる時間ではないようだったので、そこでも外れたと思う。

さて3つの選択肢というのは苫小牧港から仙台か八戸に出るか、函館から青森に出るか、この三つだ。青蘭航路というのもあるが今は船の改装中で丸々休航中なので選択肢からは外している。仙台港行きの太平洋フェリーの苫小牧港発は19時丁度で実のところ昼に音威子府を出ても当日中には間に合わない。というわけでこれも選択肢から消えた。そうなると残りは苫小牧港発八戸港シルバーフェリーか青函航路かということになるが、筆者はどちらかと言えば寝たかった。シルバーフェリーは眠れないが、それでも青函航路に比べれば幾分マシである。港に放り投げられるのも人間的な時刻だ。

 

妥協のシルバーフェリーということになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如

筆者の脳内に溢れ出した

 

 

存在する記憶ーーー

 

ithikawa.hatenablog.com

 

そう、筆者は去年のこの時期に、全く同じ行程で札幌から帰ったのであった。

どのくらい同じかは…… おそらくしばらくしたら出るであろう本シリーズの最終日の記事を読んでもらえればわかると思う。

 

 

 

 

 

 

閑話休題。閑話でもなかった気がする。何分本筋から外れているように見えてこの旅の話でしかない。そういう必要なことを済ませていると、ついに搭乗手続きが始まった。冒頭の写真の通りである。稚内までおよそ二時間。Wifiが無いかもしれないからと分厚い文庫本を入れてきたが大して意味はなかったようだ。ボーディングブリッジから見える機体にはANA Wifiと書いてあった。期待に胸が膨らむ。然しつなぎ方を知らなかった。機内誌に書いてあるだろうと席に着くなり機内誌を探したが、機内誌は無かった。貴重な機内コンテンツの一つをつぶされた気分であるが問題はそこではない。Wifiのつなぎ方がわからないのだ。筆者はドアクローズまでの僅かな時間でGoogleに問い、ANAアプリを入れなければならないっぽいことを突き止め、ANAアプリを入れなんとか九死に一生を得たのである。ANAアプリを入れなければならないらしいというのは盲点で、これは知らない人は普通に初回使えず終わると思う。

機内コンテンツを存在しない機内誌からTwitterに切り替え、すきそう活動に励み2時間を過ごした。

 

 

稚内空港の手荷物受取カウンターに来ていた。ベルコンは一機しかなく、一機しかないがために「言わなくてもわかるやろ?」と言わんばかりにどの便の荷物が流れてくるかの表示は無かった。確かに要らないのは事実なんだが、それはそれとして。

手荷物を受け取り、客室に持ち込んだ荷物とマージしてバス乗り場へ向かった。バスは結構混んでいた。稚内駅前まで乗って歩いてホテルに荷物を放り投げに行くかと思っていたがどうにもホテルに行ってくれるらしいのでそのまま乗り続けた。

 

 

本日の宿はサフィールホテル稚内だった。旧称の稚内全日空ホテルの方がなじみ深い人も多いのではないかと思う。筆者は旧称の方が馴染みがある。何せ全日空の手を離れてから稚内に来ていないからだ。筆者が稚内に最後に訪れたのは2017年の3月のことだった。あの日もろくに観光せずとんぼ返りだった気がする。稚内に来て観光したのは今から凡そ10年前の2014年の8月。真面目に稚内の地に来るのはそれ以来かもしれない。

ホテルに荷物を投げた。シングル素泊まり8千円で泊まる宿にしてはフロントの圧が強い。まあまあいいホテルなんじゃないかと思えてくる。実際多分そうだと思うのだが。そんなホテルに廉価で泊まっているにも関わらず、部屋の等級が上がりツインになった。冬だからか?

荷物を置くだけ置いて、市街へ向かった。いろいろ足りなかったからだ。致命的なのはカイロと耳当てだと思う。この二つは無いと比喩でなく最悪死ぬので絶対に手に入れる必要があった。ホテルを出て駅前を過ぎたあたりで手袋も一緒に宿に置いてきてしまったことに気が付いたが、この程度で音を上げていては明日死ぬだろうからと見なかったことにした。

まず相沢に向かった。相沢は食品スーパーだった。食品以外は無かった。食品のチョイスには謎のこだわりが見えた。凄みみたいなのは感じたがそれはそれとして筆者は今は別に要らんなになっていた。必要なのはカイロと耳当てだったからだ。

 

 

 

南下していく中で、そういえばとGoogleMapで見て気になっていた旧瀬戸邸に入った。

見ての通り、旧瀬戸邸はまあまあ普通の大きい家に見える。そう、普通の大きい家に見えるのだ。GoogleMapに上がっている写真を見ても「あ~よくある感じの奴ね」と思っていた。全然違った。

 

 

殆どの天井板はでかい一枚板を張って、天井竿は漆塗りだったりとこだわりが随所に見られた。何なら書斎は格天井である。格天井を一般的な家で使うことはまあまずない。施工が面倒らしく、基本高価と聞く。だもんで多くの人間は多分使わないし、そうでなくても天井は拘らないんだと思う。格天井というと大抵は社寺だったり、良い方の旅館の宴会場だったりで採られがちなものだ。書斎には象牙製の宝船が飾られていたり、作り付けの家具が置かれていたりと只者の家ではないということがそこかしこから伝わってくる。ほかの部屋でなんの毛なしに置かれているものもまあまあ高そうなものばかりであった。津軽漆のデカい箪笥や三面鏡、デカい天然石など。

 

「建材に竹が使われているでしょう?東京からおいでだと結構見ると思うんですけど、こっちだと無いんですよ」と案内してもらった方に言われた。実際北海道では孟宗竹を見ない*2。あるのはどちらかと言えば白樺の林である。わざわざ運んできて使ったということなんだろう。家への拘りがとにかく凄かった。こだわりというと、台所から玄関まで見通せるとか、書斎からお手伝いさんの部屋が見通せるように窓を配置しているとのことだった。風呂は風呂で天井をアーチ状にして水滴が壁面に行くようにしていたり、床材をイタリア産の大理石にしたりもしている。建材や構造の一つ一つすべてに拘りを持って建てたであろうことが容易に想像できる。ただの豪商ではなく、金の使いどころを知り、金を使うべきところで使っていた人のようにも思えてくる。

30分くらい見ていると団体さんが来た。なんの団体かは聞かなかったが、結構多かった。騒がしい中で見るのはあまり好きではないし、騒がしくないからこそ建物を見るのが好きだったりする。仕方なしにと旧瀬戸邸を後にした。

*1:700円

*2:檜山にはあるらしい