旭駅本屋

SNSが普及しきった今日において、人々はなぜブログを使うのであろうか。

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由利高原鉄道貸切列車乗車記 4

この駅は、好きですか。

わたしはとってもとっても好きです。

でも、なにもかも……変わらずにはいられないです。

楽しいこととか、うれしいこととか、ぜんぶ。

……ぜんぶ、変わらずにはいられないです。

 

それでも、この場所が好きでいられますか。

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4. 新潟観光

萬代橋の向こうにあるホテルを予約していたので歩いて向かうことにした。どうせ大した距離ではない。

振り返って駅を撮る。
高架化工事が進んでいるというからてっきり跡形も無くなっているかと思っていた駅舎は、5年前から何一つ変わらない姿を見せていた。
国鉄民衆駅の無骨な箱型の駅舎、ステーションデパート直結の出入り口、駅前の古びた鉄骨造のバスターミナル。国鉄末期までは全国どこに行っても見られた、都市近傍の国鉄の中心駅の姿がそっくりそのまま残っている。しかしこの駅舎も流石に来月にも解体工事が始まるということだそうで、ギリギリ滑り込みセーフをキメた形になったようである。

新潟は高架化前に何度か訪れており、それ相応に思い入れのある駅であった。
またこの駅舎を見ることが出来て嬉しい反面、これで本当に最後になるとの感が強かった。帰ってから、何度と無く降りた地平ホームや地下通路の写真が手元に残っているかどうかフォルダ内を漁っては見たものの、こういうものは往々にして残していないものであり、通路や建物が消えるとともに、思い出も少しずつ消えていくような感じがしてならなかった。

 

程々に語ってはいるが、実は筆者は新潟駅のほんの目の前にある交差点から先を歩いたことがない。そういうことなのだ。オタクは乗り換えでしか拠点駅を利用しない。新潟なぞ観光スポットはそれこそ死ぬほどあるのに、今の今まで観光らしい観光というものはしてきていなかったのである。

ホテルへ向かう折ではあったものの、実際のところ新潟の市中心部を初めて散策することになり、改めて裏日本最大の都市であるだけのことはあると実感するのである。
もともと今日見てきた都市が都市だったというのはありつつも、矢張りビルの高さは違うし歓楽街も賑わっている。時間は20時ごろであり、土曜であるから表通りのビルの灯りも殆どないが、人通りは確かにあった。

しばらく歩き萬代橋の袂のあたりまで来ると、新し目の商業ビルが交差点を挟むように建っており、都市内部で新陳代謝が行われている様をまざまざと見せつけてくれる。

萬代橋信濃川を渡る橋であり、新潟地震の際にも落ちなかったことで有名であるが、その萬代橋の両側にまんべんなくビルが立っており、それがこの都市の異質さというものをより際立たせているように思う。大河を中心として両岸に同じ都市が形成されるのは極めて稀(だと筆者は思っている)。とはいえ新潟の場合成立過程的にそうならざるを得なかった部分が大きいだろうし、だからこそこういう興味深い光景が広がっていると言えると思っている。

 

萬代橋を渡るとすぐホテルがある。

 

ホテルに入り、RJ45が直接生えていたことに感動しながらブログ記事を3つほど書いてその日は寝たのである。

 

 

 

翌朝。

体がバキバキしていた。

荷物を背負って街歩きをしていたのが応えたらしい。運動不足のツケだ。

長居したいところではあったが、時間も勿体ないし見るところも多いのでとっとと引き払って駅に向かった。

 

駅でコインロッカーに荷物を放り込む。
新潟からまず新津に出て、新潟市新津鉄道資料館を見ようという腹づもりだった。なのでカメラとスマホと財布さえあればあとは何もなくてよかった。なので、遠慮せずコインロッカーに全てを突っ込んで、文字通り手ぶらで列車に乗った。

新津は新潟から20分ほどでつく。30分くらい掛かるかなと雑に計算して列車に乗っていたが思いの外早かった。駅前でレンタサイクルを借りて、鉄道資料館に向かった。

徒歩だと躊躇する距離だが、自転車なら早い。ゆっくり走っても10分程度で着いてしまった。ちなみに、道の途中で歩道が消えるので、自転車で行く場合は予め左側の歩道を走っていったほうが良いと思う。というか予習したほうが良い。橋梁とかでサクッと詰まる。筆者は後続の車にヘイトを蓄積させながら走っていたが、できる読者の皆様はぜひ行くならストリートビューで予習をして行くことをおすすめする。

 

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さて、新津鉄道資料館といえばこの2両を思い浮かべる人が多いと思う。実際筆者もそうで、これが一番の見所だと思い込んでいた。

これが一番の見所だと思っている読者ほどぜひ行って欲しい場所だった。何せJRの手が掛かっていない博物館とは思えない収蔵品の数々に加えて、鉄博にすら飾ってないような代物まで置いてあるのだ。

 

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まずこれを見て欲しい。これは館内展示のごく一部に過ぎない。

ごく一部のくせして、この範囲に輪切りのディーゼルエンジンとモータ、実車のプレート部分の切り出しが3両分とあるのだ。まずこれだけの資料は並の博物館には置いていないと思う。加えて、その資料が細かな分類ごとに分かれて展示されており、かつそれぞれ意味を持って展示してあるのだ。実はこれ結構ハードルが高い。多分普通の博物館でやろうとすると夫々が百年スパンで間が空いてしまったり、技術的な関連性がいまいち微妙になったりするとかそういう要因が出てくるのかもしれない。

 

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狭いながらも、必要不可欠な定番どころはしっかりと抑えていくそのやりようには流石に驚くばかりであった。タブレットもちゃんと楕円含めて4つあるし、通票閉塞の説明もパネルにさりげなく書いてあるなど、他もやってるような定番どころはしっかりと抑えてきている。信号は3灯式しかないし、イジって点灯させたりとかは出来ないが、スペースを勘案すればまあ仕方あるまい。

割と多くの博物館でスペースを割きがちな旅客輸送のコーナーもある。
しかしここでは旅客、貨物、小荷物全ての説明や展示がある。なんだこの博物館。

 

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実物の車輪とシートを使い、平面で図示するだけでなく立体的に線路と座席の位置関係がわかるような展示などもあった。初めて見るものであったが、両方実物が展示できるし直感的にわかりやすいしで結構いい展示だと思っている。平面のイラストは死ぬほど見てるんだけどやっぱ実物は説得力が違うんだわ。

 

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破綻なくまんべんなく展示ができるのも、ここが元々鉄道学園だったというのもあるのではないかと思えた。それ用の教材と思しき展示物もあり、それ普通の鉄道系博物館にもくれよの心持ちしか無かった。いや、あるけど気がついてないだけなのかもしれないが。

 

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鉄道学園の教材の一つだったとも思われるが、路面の断面図もあった。

 

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こちらもそれと思われる、ブレーキの構造を模した…… というか実車からぶっこ抜いてきたと思われるものなど。

 

とにかく、教材という側面もあったのだろうが、実物が多いのである。

実物の展示の仕方もまた凝っているというか、わかりやすいというか…… 来る人を舐めない姿勢が感じられるのがそこはかとなく良かった。それルビ振っても小学生わからんと思うねん、みたいな妥協が一切ない。

そして、広汎なものを取り扱うだけではなく、地域色を程々に取り入れているのがなおのこと好感が持てるのである。地域の博物館は矢張り地域のものを展示してこそである。

 

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越後湯沢のスプリンクラーの給水管と本体のみならず、数々の本体部分の展示もあり凝り方が半端なかった。博物館のあるべき方向性だと思っているし、決して大衆受けはしないだろうしそこまでやるべきかと言われると一瞬ためらう気はするのだが、そういうものを押しのけて徹している辺りが最高に好感が持てる。

 

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兎に角良いのだ。

ぜひ行って欲しい。

当初1時間くらいで終わるだろうなーと思っていたが見事2時間かかった。それでも時間が足りず、屋外展示はもう少し見たいくらいだったのだが、天候がヤバヤバのヤバだったのでチキって切り上げてしまったのである。こういう時自転車は弱い。

 

降られること無く新津駅になんとかたどり着き、自転車を返した。

 

あとは新潟できらら展を見るだけである。

なんか橋脚に軽トラが突っ込んで運転見合わせなどの自体に見舞われつつ、なんとか新潟駅に戻ってくる事ができた。振ったりやんだりしている天候は如何とも言い難いものであったので、バスで万代シティまで出た。バスは楽。ちょお楽。

 

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途中にカレーしか売ってないそば屋があったので、昼飯にと掻き込んだのである。ちなみに金があんまないからと普通盛りを頼んだのだが、普通に多かった。大盛りを頼まなくてよかったと思った。

 

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新潟きらら展では、新潟展で初めてお目見えしたという永山ゆうのん先生の落書き?を拝見した。落書き?コーナーは東京展、大阪展のものも合わせて巡回しているようで、新潟展では余すところ無く色々な作品が描かれた色々を見ることが出来て大変費用対効果に秀でていた。多分これで図録を変えば東京展イラストも補完できるし、何より人は少ないし、それで良い気がする。なんで俺はあんな混雑した東京展を無理して見に行ったんだろう。

特に物販は雲泥の差だった。体育館に並んで号令とともに入っていくスタイルが嘘だったかのようにガラガラだった。密を避けましょうと書いてあったりするので相応に混んでいたりもしたのだろうが、会期末なだけあって非常に閑散としていた。なのにモノはあった。筆者がめちゃくちゃ欲しかった「肝臓売らなくちゃ小銭入れ」と「承認欲求モンスタースマホカバー」は何の労もなく手に入れることが出来た。ほんまこれで良いのか?いや良いけど。

 

このあと、新潟ヨド、メロブらしんばんなどを拝見し、そろそろやることが無くなったということで適当な時間のときに乗って帰ったのである。