フェリーはクソ。はっきりわかんだね。
4時間睡眠で大音量アナウンスで叩き起こされそう思った。
7/24
苫小牧港に放り投げられるのは朝の6時であるが、読者諸兄の皆々様はよく御存知の通り「まもなく接岸します」からの間がすこぶる長い。30分前に叩き起こされ、眠い目をこすりながら排尿し、デッキでああ苫小牧港だなぁと最早見慣れた景色を眺め、席に戻り寝るにも明かるく寝れたもんではないなぁと下船の準備をするわけである。
眠い。
筆者はあまり雑魚寝で寝れる方ではない。寝台が取れない時点でまあ想定していたことではあるが、案の定あまり寝れない。確かに一昨日寝ていることもあるが、それは昨日で相殺されたものだ。今日眠いのは想定されていない。どうしようもないが、どうしようもないくらい眠かった。これなら宿に泊まったほうがQOLは高かったかもしれない。そうでなくても太平洋フェリーの二等でせめてもう少し悪あがきをしても良かったかもわからない。
売店を眺め、新聞を適当に買い、やることもないからとベンチに座り今日の行程を考えていた。
今日は八雲に向かう必要がある。
それ以外は何も決まっていない。
いや、決まっていることは一つある。
18切符を使うことだ。
それだけだった。
駅前のクソデカ廃墟を見ると苫小牧だなぁという感想に至る。
レストランフロアっぽいガラス一面のフロアがこの駅前の繁栄っぷりを伺わせる。レストランフロアがある百貨店なり都市型モールなりというとそこそこの規模になるからだ。しかしそれも廃墟。時の流れは残酷である。多分国道沿いは栄えていて、この道内第四位の人口を誇る大都市はあいも変わらず繁盛しているのかもわからないが、実際問題国道沿いはあまり行ったことがないのでわからないものである。
苫小牧からはキハ141で一路室蘭本線をゆく。
目的地は登別である。
登別には温泉がある。そして、嬉しいことに朝8時から開いている公衆浴場があるらしい。筆者は昨晩広めの風呂に入ったとはいえ、矢張り旅行に温泉は外せない。これは行くしか無いだろう。
空腹だったので、温泉街の中程にあるセイコーマートで朝食をとった。
パスタとおにぎりである。セコマパスタは北海道の名物だし、温めますかでおにぎりもレンチンしてくれたし、これはもう地のものを食ったと言えること間違いないだろう。
カツゲンがなかったことにやや落胆しつつ、5分ほどで手早く朝食を済ませ散策を続行した。
間欠泉があった。説明によると8m噴出するらしいがそういう素振りは見られなかった。普段こんな感じで上るときは盛大なのかもわからない。
案内の地図によれば先に地獄谷というものがあるらしい。時間もあることなので訪れることにした。
想像の数倍は地獄谷でテンションが上っていた。
硫化水素の香りと白煙の登る草木の生えぬ大地は箱根の大涌谷を思い出す。
奥に行くと天然の間欠泉があり、これはおそらく箱根にはないポイントだろう。箱根は間欠泉が無い気がする。知らんだけかもわからんが。
更に歩けばこの先に大湯沼というものがあるらしい。
今日は実に気分が良いので、そちらも梯子しようと思う。
これが大湯沼。
大とあるだけデカい。一見の価値はあるだろう。
然し地獄谷の核心からは20分くらいかかるし実際峠越えになるので地味にキツい。向かったことを若干後悔している。フェリーで寝ている間に多少汗をかいたろうとは思うもののそれ以上にぐっしょりと汗で濡れて、最早要入浴と行って差し支えないくらいの体になっていた。
とはいえ坂はここまでで、この先は川沿いでアップダウンはないはず。この先に天然足湯なるものもあるらしいので、更に進もうと思う。
進むと行っても実際多少進んで(途中盛んに噴出するからと見られなくなる大正地獄を経由して)温泉街に戻るコースである。
この川幅で、森の中のロケーションで、川から湯気が出る光景をまじまじと見たことは思えば無かった気がする。大分進んでぬるくなったかという辺りで天然足湯なるものは出現する。足湯に浸かるのはタオルを持っていなかったので厳しそうだと判断し、手だけ突っ込んで塩梅を見ることとした。
意外と届かなかった。
なんとか手を伸ばしてお湯の中に手を突っ込む。
当然のように温かかった。
ぴちゃぴちゃと水をはねて少しばかり遊んで、温泉街に戻った。
途中で間欠泉を確認したが、完全に沈黙していた。あれが出ている部類だったらしい。
登別温泉には公衆浴場がある。
しかも源泉かけ流しらしい。
体は汗でぐっしょり濡れていた。
駆け下りるように公衆浴場へ向かい、衣類を重ならないように脱衣かごに掛けて、広い湯船に入った。
ジャリっとしたなれない感触が足に伝わった。
進むと更にジャリジャリしていた。
どうにも析出物が堆積しているらしい。堆積するのはわかるが限度というものがあろう。毎日風呂を洗ってこれと考えると相当凄い湯なんだろうなというのが否が応でも伝わってくる。
硫黄の香りとそこそこの温度のお湯を広い湯船で堪能する。
旅行に求めているものが確かにここにはあるし、今最高に旅に出ている気分になる。
そう思うのであった。