旭駅本屋

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最果ての鉄路 (1)

※注意※
この話は冬の北海道旅行の話ですが、断じて厳冬期の北海道旅行を推奨するものではありません。
厳冬期の北海道旅行は、気象情報、交通情報をよく確認の上、十分リスクを認識して検討しましょう。

 

2022/01/07

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前日午後から首都圏で大雪ということで、千歳の前に羽田で足止めを食らうのではないかとヒヤヒヤしたものだったが無事に北の大地にたどり着いた筆者。長靴はおろかカイロすら用意していないという慢心スタイルだったので、とりあえず桑園に来ていた。桑園はJR北海道の本社があることで有名だが、イオンやホーマックや北のたまゆらなんかがあり、旅行者にとっては色々と有り難い土地である。

イオンに入り、そういえばと冬用のズボンを買い、六花亭を冷やかし、ホーマックで61℃まで上がると書かれている地獄みたいなカイロと激熱と謳う靴下用カイロと普通の靴下用カイロを仕立てた。筆者は正直なところ使い捨てカイロを余り信用していない。たいていはいざってときに使い物にならないからだ。それでも買う。リスク分散は必要だ。すでに札幌駅前の淀でベンジンカイロを仕立てていた。ベンジンカイロは航空機に積めないので、現地で買うなり現地の宅に送りつけておくなりのソリューションが求められる。去年はこれに引っかかって新千歳空港に放り捨てて帰ったのだが、今年の復路は新日本海フェリーなので帰りの心配はない。なので心置きなく買うことが出来るというわけだ。ベンジンカイロと使い捨てカイロを双方運用することで、万が一どちらかが微妙なことになってもなんとかなるだろう。これくらいの保険は取っておかねばなるまい。なにせ相手は手強いのだから。

ホーマックを一通り眺めて買うものも無くなったので、昼飯がてら札幌に戻った。

ひと月前に北海道に来ていた宅に購入を依頼したLOVE北海道フリーパスを有難く使っていく。今日は普通列車だけで終わるので正直うま味は殆どないが、運賃を気にせず動けるのでまあまあ有り難い。冷静に考えると、利用開始日を一日ずらして、ほぼ一日時間が余る7日目に利用日を持っていって、今日は普通にカネかけといたほうが良かったかもしれない。

 

札幌で時計台を拝みつつ、来たからにはと丸井今井を冷やかし、チカホを驀進して駅に戻った。ここで渡道してきたオタクと合流し、寿司を食った。根室花まるは噂に違わぬ美味さだった。適当に知らんネタを食うのは少々抵抗があり、たいていどこで食ってもネタが偏るのが回転寿司の定石なのだが、すべてが美味いので回ってる適当な価格帯のネタを取っては食っていっていた。汁物の量が想像の3倍くらいあったりと色々難儀なところもあったが、何より美味かったので全て良し。

この後、合流した氏より「ホームセンター行きたいんだよね」という言葉を賜り桑園に向かっていた。さっき来たんだが?

丁寧にホーマックへ案内をし、さっき買い逃したハサミとライターを調達した。ハサミがないとタグを切るのに苦戦する。間違いない。買おうと思って忘れていたが、再度来たからには買う他なかろう。

氏は耐雪用のズボンやカイロなんかを買っていた。

頃合いになったからと地下鉄で真駒内へ向かった。

今宵の宿は定山渓。真駒内からバスで数十分というわけである。

 

 

 

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予定していた時刻より1時間ほど遅くなり完全に日が沈んた定山渓温泉にやってきた。黄昏時を拝みたかったものだがどうしようもない。一泊二食付き15k(うち3kは実質キャッシュバック)の宿ということで、どんなもんかと余り期待せずに向かった。

 

 

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筆者もK特急氏も作画資料にと写真を撮るオタクであるが、撮る前に違和感に気がついた。金額がおかしい。

見てほしいこの卓を。何か乗っているのが見えるだろう。何を隠そう蒸籠なのだ。蒸籠で蒸かせというのだ。中にはまんじゅうが2つ入っていた。そういうことだ。マッチを擦って燃料に火をつけて蒸籠でまんじゅうを蒸す。筆者は生まれて始めて宿屋でまんじゅうを蒸したかもしれない。K特急氏が冷蔵庫を見てすごいすごいと言っている。備え付けの水と烏龍茶が飲み放題らしい。なんだそれ。この値段で出てくるものなのか?

 

ろくに水を取っていなかったらしいK特急氏は勢いよく烏龍茶を滅ぼしていった。一服してなお夕飯までまだ1時間あるからと風呂へと向かった。豪奢な湯浴み所を一瞥し暖簾をくぐる。風呂はデカかった。デカい風呂は健康に良い。かけ湯をし、内湯で体を温めてから露天に向かった。

露天はほどほどに温かかった。これは出られないやつだ。

軒先は露天風呂と廊下を囲うように伸びているが、それでもなお入り込んできた雪が壁際に積もっていた。時折吹き寄せる風が表面の湯気を攫って奥へと押しやってゆく。奥の湯口の近くで白い湯気の動きを眺めながら暗い空を拝んでいた。矢張り温泉は良いものだ。

適当に明日どうしますかなど、他愛のない話をしていた。

ここなら何時間でも浸かれそうだと思ったが、実際比喩ではなく本当に1時間浸かっていた。お陰で夕飯会場に若干遅れて辿り着いたのは言うまでもない。

 

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飯は豪華だった。

K特急氏が「バイキングは面倒でね」とバイキングでない夕飯をご所望であり、筆者もバイキングは面倒だったので賛同しバイキングでない飯を探していたのこともあり、この形式の飯自体は特に違和感はない。違和感があるのは燃料で燃えている飯の数だ。3つは流石におかしいと思う。味噌焼きは定番なのでわかる。釜飯はわからない部類だがまだわかる。最後はお吸い物のような汁物のようなという代物だが、なんでも汁物は別に出るという。何?

手前のから順に飯を攻略していった。

うまい、うますぎる。

何を食っても美味い。実質12kでほんまにええんかになってくる。飯だけでも結構掛かりそうなものだ。

気を良くした我々一行は酒を一本頼み、ちみちみ飲みながらうまい飯を平らげた。

 

 

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飯を食った後筆者は外に出ていた。
観光ではない。観光なら時間的にも飯の前にやるべきだ。
では何か?
それは露天風呂に入る前の話に遡る。

 

「着替えていかないんか?」
「まー着替えたほうが楽なんで着替えていきますわ」
キャリーバッグの中からパンツとシャツを探す筆者。シャツはすぐ見つかった。靴下もある。何かが抜けている気がした。

「あ」

「どしたん?」

 

 

「パンツ忘れたわ」

 

 

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一日くらい同じパンツ履いててもまあなんとかなる気もしないでもないが、やらかしたら無は流石にまずい気がする。なので調達に向かっているというわけである。宿の売店を覗いてみたが案の定パンツなどないので近隣のファミマに向かった。コンビニには大抵のものがある。下着もある。なんで下着なんか売ってるんだろう、買う人おるんかな?と思っていたが案外買う人はいる。ここに。

パンツは税抜590円だった。

1枚しか入っていなかった。

高い勉強代だなぁ。

 

 

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替えのパンツを調達し、大浴場の2に向かっていた。この旅館、大浴場が3つあるのだ。本当に実質12kで良いのか?

大浴場のうち一つは男女兼用で今日は男子は使えないということなので見送り、瑞雲に来ていた。瑞雲は別棟にある。閉まっているレストランやカラオケルームを拝みながら若干冷える廊下を歩いた。我々は作画資料だと喜んで写真を撮りまくっていたが、多分狂いだと思う。

瑞雲も中々の風呂だった。

2階建てで上が脱衣所、下が浴槽という造りだった。浴場では定山渓温泉の歴史などが紹介されている。松浦武四郎が訪問し、その後美泉定山が温泉街を築いて発展させたというのが概ねの流れらしい。武四郎という文字には見覚えがあった。あったのだが、見たのは音威子府でのことである。流石に離れすぎている気がする。

先程の温泉とは源泉が違うのか、若干硫黄っぽい香りが強くなった気がする。こちらでも内湯で体を温め、露天風呂へと向かった。

「そういえば先週温泉行きたいって言ってました*1けど、どうです?」
「温泉行きてェ~」

などくだらない話をしていた。

渓谷沿いの露天風呂はガッチガチに屋根と壁が構築されていたが、隙間から見るに先程ファミマに行く時通った道路から見えていた建物にあるようだ。ロケーションはすごい良さそうなもんだが、暗くて何も見えないのが残念なところだ。

程々に浸かり、程々に体を温めて風呂から上がった。

「明日も温泉行きますけど、明日も同じリアクションしそうですね」

*1:宮ノ下温泉に浸かった直後に「温泉行きてえなあ」と発言していた