旭駅本屋

SNSが普及しきった今日において、人々はなぜブログを使うのであろうか。

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温泉

宿題、再履修…… 旅行をすると大概そういう行ったはいいが行けなかったのでまた行く時行くべき場所が生まれる。

例えばたまたまふと窓の外を見ていたら案件が生えていた、そういうこともあるだろう。

あれは8月のこと。東海道線で東京に帰るときの話だ。たまたま外を見ていると、何やらただならぬ建物が目に入ってきた。すぐに端末で地図を見ると関所であるという。それが筆者と新居関所の出会いであった。調べると江戸期から現存する関所の建物であるという。これは行かねばならぬだろう。

しかし他に予定もあったので降りることも出来ず、いつかこの辺りに行くときに行こうと心に決めて4ヶ月が経った。

季節は次の18シーズンになっていた。18券であれば大した金を掛けずに行ける。なんなら他の案件も履修できる。であれば行きたいところだ。行きたいところだったのだが、他の案件がいまいち浮かばなかった。温泉に行くという大義名分を掲げたいところだったのが、伊豆は果てなく遠く、金が掛かる。伊豆急はめちゃくちゃに高いし、東海バスの運賃は伊豆急が可愛く思えるくらいのレートであった。駿河湾フェリーで優雅に土肥へ向かいそこからバスで修善寺、下田と考えこそしたものの、あまりの金額に二の足を踏んでいた。

イマイチ気乗りはしないし、それなら他の気乗りしない案件と含めてインターネッツの有象無象に託して行き先を決めるのも良い気がしていた。

 

 

この瞬間、再々履が確定した*1

 

 

2021/12/11

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高崎に来ていた。

子供の頃から変わらない乗り場案内を見ていた。これを見ると「ああ高崎に来たんだなあ」と思える。115がゴロゴロ居た頃から変わらない高崎駅の象徴といえる。あの頃は0番線までノーラッチで行けたんだよなぁと思う暇もなく6番線に向かった。なぜか。水上行きは基本的にドチャクソ混むからである。新潟を目指す貧民旅行者の群れでめっちゃ混むのが上越線の日常だ。筆者は立席になるんじゃないかとすら思っていた。実際はそんなこともなく、普通に座れたのでホッとしていた。

 

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211に乗り、水上を目指す。
車内は椅子が全部埋まる程度の混雑で、程々に混んでいるなという印象だった。
調べてみれば長岡行きに接続しているらしい。18きっぱーが痰を吐きながら押し寄せてきてもおかしくはないロケーションだ。

そんな中、途中渋川沼田でゴソッと降りて、違和感を感じた。

18きっぱーが(思っていたよりも)少ないのである。

思っていたよりも少ないのであれば、この先の長岡行きが4連なら座ってラクラク国境の長いトンネルを越えられるかもしれない。

筆者は迷っていた。

越後湯沢温泉は実はちゃんと入っていない。

ちゃんと入っていないなら行くべきだろうし、渡りに船と言える状態だった。

 

水上峡が眼下に広がる辺りで先頭を目指し続々貧民旅行者が移動していた。

乗らないことも選択肢に入れつつ、駅のホームを眺めた。

 

E129が止まっていた。

 

2連の長さではなかった。

 

目的地が決まった瞬間である。

 

 

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国境の長いトンネルを抜けたが、そこは雪国ではなかった。

線路際には薄っすらと白く積もるなにかが見えたが、あの程度は数年に一度首都圏でも見られるレベルであり雪国に求めるものではない。まだこの時期ではそう雪も積もっていないのだろう。

水上まではあんなに晴れていたのに、トンネルを抜けると雪国を思わせるどんよりとした雲が空を覆っていた。雲量10。非の打ち所のない完璧な曇天である。

水上に行くつもりだったので群馬県の天気は事前に調べており、今日は晴れ、明日は時々くもりだったので今日行くべきと決めたというのに、曇りの土地に足を踏み入れてしまったがために事前調査が無になってしまった。

計画を反故にするほうが悪いというものであるが、あれは行くべきものだったのでやむを得ないと考えるべきだろう。そういうときもある。

 

越後中里で旧客の生存を確認し、暫くすると越後湯沢である。

 

 

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越後湯沢は当然ながらSuicaペンギン同志の統治が及んでいない。
そんなもんは当然オタクは理解しているものだが、常人は理解していない人も多いらしい。実際このクソデカ主張の前で「Suica使えないの?」と言っている人を見た。いや、冷静にSuicaで来る距離じゃなくない……?構内をなんぼか撮影しある程度時間が経ち通路からは人が捌けたくらいの頃合いになってやっと窓口に向かったのだが、Suicaの精算と思しき人が列を成していた。これは長く掛かりそうだと思ったものの、箱を持って外でも集札をやっていたので、18券を見せてラクラク通過した。

 

エリア超えは気をつけよう!

 

 

時刻は昼時。水上時点で11:39とかなのでそらいい具合に昼にもなる。

飯屋が駅の中にあるので昼飯でも良いかと思っていたのだが、列が形成されておりそこまでして食うものでもないなになってしまっていた。どうせ市街で食えるだろうと適当にビジターセンターで地図を拝借し、駅の外に出た。

 

 

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駅前にも観光案内所があり、駅の中のビジターセンターを血眼になって探す必要はなかったなになっていた。

ロータリーの向かい側にはうまいで挟まれるラーメンショップの文字もあり、GoogleMapの評価も高かったのだが17時からの開店ということで無念の敗退。ラーメンショップ、お前と戦いたかった。

とりあえず最も歴史の古い公衆浴場であるとされる山の湯に向かった。
冷静にGoogleMapを見るとガーラ湯沢の方が近いように見えた。通年営業してくれ。

 

 

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腹を空かせながら温泉街の核心と思われる地域を歩いた。

駅前こそ賑わっていたが、少し離れるだけで人通りは殆ど無くなった。

駅から近い地域は新しめでおハイソな酒屋があったりと、新陳代謝が行われているように見受けられた。

暫く離れると空きテナントの目立つビルやスナック街などが見えてくる。スナック街が残っているだけでもまだ客が来ているということで、良いことなのだろう。更に進むと地場のトラディショナルな酒屋があったり、あからさまにアウトドア用品を売る店などが増えてきたりする。近傍にいい感じの和食屋を見つけた。定食で千円ちょっとなので別に悪くなかろう。店はガラガラだった。魚が有名な老舗らしい。適当に安めで腹にたまるものということで、適当に天ぷら定食を頼んだ。

 

湯沢温泉の温泉街自体はそう広くない。公衆浴場の山の湯辺りまでは建物が連なっているものとばかり思っていたがそんなこともなかった。もちろんうち幾らかは廃墟を壊した土地だったりするのだろうが。駐車場の奥の僅かな山を使ったゲレンデやらが見える。どちらかといえば温泉街のほうが僅かな平地を使って立っているのだろう。湯沢一帯に配電しているものと思われる水力発電のでかい送水管を超えると、目的地山の湯である。

 

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いかにもな公衆浴場だった。

番台のおっちゃんの前にある賽銭箱に食券機みたいな自販機で買ったペラい紙を入れて中へ。盗難が多発しているというクソ治安の悪い張り紙を見ながら脱衣所に入ると土地のおっちゃんが出迎えてくれた。出迎えてくれたというのもいささかオーバーな表現であるが、ちゃんと挨拶して愛想よく応対していたらいい感じによそ者として受け入れてくれたようで色々レクを受けていた。めちゃくちゃ盗難が発生しているので脱衣所手前のロッカーに貴重品は預けるべきと言われ、大人しく従った。

あとは体を清め、狭い風呂に浸かった。

単純硫黄泉ということもあり、かすかに硫黄っぽい香りが漂う。

狭いといいつつも頑張れば10人くらいは入れるだろう。真っ昼間なのに洗い場が埋まるくらいには人が居たが、湯船自体は最大3人位しか居なかったので広々浸かることが出来た。湯口からは温かい上限くらいの良い塩梅のお湯がじゃぶじゃぶ流れており、浴槽からも窓に洗い場にじゃぶじゃぶ湯が溢れている。いい塩梅のいい温泉だった。

成分分析表いわく43℃らしい。個人的にはこれくらいの温度が好きなのでとても良い。

結局5分くらい浸かって風呂を出た。

 

 

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ダメ元でGoogleMapでガーラ湯沢の時刻表を見たらどうも列車があるらしいので信じてガーラ湯沢駅に向かった。まあ仮に無くてもこのバカみたいにでかい駅を拝んでから帰るのも悪くはなかろう。大して距離も伸びないし。

 

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列車は動いていた。

スキー場は閉鎖していた。

 

つまりどうなるかというと、こうなるわけだ。

 

それでもどこからともなく人が集まってきて列車に乗っていったのは中々ヤバみを感じたが、多分山の湯にでも行っていたのだろう。

 

作画資料とばかりに無限に写真を撮り、越後湯沢に向かった。

 

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読者諸兄の皆様もぽんしゅ館はご存知であろう。

越後湯沢と新潟にある日本酒の利き酒が出来たり日本酒が買えたりする施設である。

そしてここで乗り換えで20分ほど時間がある。20分は長くもなく短くもないが酒を飲むのには中々ハードルが高い。だもんで利き酒の存在自体は理解しつつも、飲むのはデメリットが大きいと思っていた。水上で温泉に行こうとしているのもなお悪い。飲酒後の風呂はかなりオススメできない。脱水で酷いことになるし、何より大抵酔客お断りだったりする。ひどくなければ見逃してくれそうなものではあるが、リスクをわざわざ負う理由もないだろう。

しかし日本酒くらいは買っておきたい。
何分温泉街では荷物になるからと買えなかったのだ。

酒目当てでぽんしゅ館に向かった。

利き酒コーナーがあった。

前を歩いていた人が吸い込まれていったので、つられるように筆者も利き酒コーナーに入った。

 

利き酒コーナーは5枚のコインを渡されそれで利き酒をするシステムである。直接硬貨を投下しない辺りで判断力が鈍ってくるのがよくないが、500円で5枚なので一枚百円だ。しっかり使っていきたい。

店員のおすすめということで酒が5種類くらい紹介されていた。5種類とはいえいい酒も入っており、いい酒は2枚だったり3枚だったり書いてあった。1枚で飲める3種の酒に目星をつけて、ぐいぐい飲んでいった。

残りはこの酒好きなんだよねラインナップからチョイスし、早くもコイン5枚が消滅した。乗り換え時に「こんな短時間で飲んだら確実に死ぬんだよなぁ」と思っていたにも関わらず、それ以上のペースで酒を平らげ10分足らずで利き酒コーナを後にした。

 

ぽんしゅ館売店で好きな酒をと思ったものの、なぜか利き酒コーナにあった好きな酒が見つけられず、無になりながら改札に向かった。

 

 

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4連の水上行きでラクラク水上に向かった。

こんな郊外でもLCD付きの車両が走っているのかと感動していた。広告は協会とかそこらへんとか、新潟駅ビルとか、NHKのニュースとか、後は無人駅での降り方のプロパガンダが行われていた。ここで初めて、きっぷを買わずに乗った場合は乗車券回収箱に現金を突っ込むことを知ったのであった。

 

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水上温泉に来ていた。

水上温泉水上駅から歩いて30分くらいのところにある。

越後湯沢温泉も店が余り流行ってなさそうだと思っていたが、流行っていなさそうのレベルを超えて確実に流行っていない感じだった。鬼怒川は酷い酷いと皆いうが、店の開いてなさで言えば水上の方が酷い気がする。規模がお世辞にも大きくないだけあって店も元々そう多くはないのだろう。多くはない店の一部が仕舞っているとなると本当に開いている店を探すのが難しくなる。

中々寂しい温泉だった。

 

せっかくだし湯に浸かりたい。

浸かりたいがいい感じの風呂に行きたい。

いい感じの風呂が山の方にあるという。行くべきだろう。

湯テルメ・谷川という公営の施設があるらしい。写真によると良さそうである。20時まで開いているらしい。

 

 

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水上温泉から歩くこと30分。谷川温泉の入り口に来ていた。疎らに照らす街灯の心許ない灯りを頼りに歩道のない道路を歩いていた。

いい具合のスピードで車が横を通り抜けていく。足元は暗く、穴でも開いていてたら足を取られること間違いなしだろう。懐中電灯を持ってきていないのも中々アレだ。そもそも懐中電灯があったところで往復1時間の道のりを進んで風呂に入ってだと、駅に着くのは大体19時頃になろう。そこで帰ると23時とかになる。とても面倒だ。

湯浴みをしていないが、帰ることにした。

 

 

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不幸中の幸い、10分後くらいにいい感じに電車があったのでそれで高崎駅へ帰った。

高崎駅で駅弁かラーメンで迷うも上州のからっ風にやられラーメンをセレクトした。ラーメンは温かい。それだけで良い。今求められているものは温かい飯だ。

1番線の傍にあるラーメン屋で適当にラーメンを啜った。

 

 

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1番線にいい感じに古の乗車位置案内が残っているらしいとの話を聞いたので、ラーメンを食った後に軽く柵越し覗いてみた。

能登、あけぼの、北陸…… 懐かしい列車の乗車位置案内がまるっと残っていた。

この時代の乗車位置案内が消されず残っているのも中々珍しい気がするのでいい具合に来た時はラーメンついでに見てみるのも良いかもしれない。あと30年もすれば徳山駅のアレみたいなポジションになっていることだろう。

 

この後は適当にビールとつまみを買い、グリーンに乗り帰った。

 

 

*1:正確には履修取り消しなので、再々履と言えない可能性は高い