帝都の外れの経営コンサルタントには、とんちで評判のコンサルさんがいました。彼の風貌はマルコメ味噌のキャラクターに酷似しており、親しみを込めて一休さんと呼ばれていました。
その経営コンサルタントの社長さんは無類の饅頭好きでした。しかし、社員が饅頭を食べることを良しとはしませんでした。なので、あくまでもこの饅頭とみられるものは毒であると言い張り、食べる時は決まって、「これは修行なのだ。うう、苦しい。苦しい。見ているだけでもつらい。ああ怖い怖い」と、苦しそうに呻きながら、パクパクモグモグと毒であるとされている事実上の饅頭を貪り食っていました。
ある日、社長さんが取引先に商談に行った空きを突いて、社員総出で社長の大切にしていた饅頭を食い尽くしてしまいました。しかし、これでは無限に説教を食らうことが確定的に明らかです。そこで、一休さんはPCのケースを開きマザーボードにバチッと一発静電気を食らわせました。
「これで大丈夫だろう」
一休さんはそう呟きました。それを見ていた社員たちはうらなりの茄子が如く不健康そうな色の顔つきになりました。
商談から社長が帰ってくると、大切にしていた饅頭が一つ残らず駆逐されている惨状を目にしました。社長、呆然。そこに好機を逃さんとばかりに現れる一休さん。ここぞとばかりに神妙な顔つきでこう言いました。
「社長が命より大切だと言っていた明日納品のデータがPCごと壊れてしまいました。死のうと思って毒を食べたがまだ死ねないのです」
これを聞いた社長さんは呆れました。
「たかだか饅頭一つで会社が傾くと言うのか……」
社長はその場に棒立ちになりながらぽつりと漏らしました。
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