旭駅本屋

SNSが普及しきった今日において、人々はなぜブログを使うのであろうか。

RSS

 

1日目

今年も又青春18券のシーズンがやってきた。
これさえあれば国内の鉄路で往ける多くの土地にたどり着けるし、そうでなくても足がかりくらいには使いようのある。青春を忘れかけた年齢のオタクにとっても何かと有益な代物だ。

しかしコイツを使うからには矢張り果てが見たくなるものだ。
なので、一日目の目的は手近な果てを摂取することにしたのである。

 

 

f:id:Ithikawa:20210309225449j:plain

筆者は館山に来ていた。
ここに来るだけでモトが取れてしまうので矢張りこの切符は有能。
尤も普通運賃が高すぎるだけな気もするが。

房総半島には手頃な地の果てがそこら中に転がっている。
矢張り手近な果てということであれば、ここに来るのが一番ラクなのだ。
だもんで毎年のように来てしまっている。

毎年ちょくちょく場所を変えつつ雄大な太平洋を拝んでは果てを摂取しているのだが、実のところ南端に行ったことがないのだ。今回は果てに向かう以外は特に目標はないので、サクッと南端を目指すことにしたのである。

南端に向かうには、館山からのバスか千倉からのバスの二通りの手段がある。
千倉から向かうほうがバスの距離は若干短い。
しかし、当然のように千倉までJRで向かう必要があり、その分時間が嵩む。
なので今回は館山から抜ける方を選んだのだ。

次のバスは12:15らしいが、時間が微妙にあり、微妙に駅前を散策して過ごした。
GoogleMapでスーパーと検索すると、どうにも市役所の裏手におどやという屋号のスーパーがあるらしい。栄えているのはどちらかというとその先のバイパス沿いだが、そこまで出ている時間もなさそうだ。一先ずはおどやまで行き、戻るだけで良い気がしてくる。ざっと向かい、適当に眺め、駅前に戻った。駅前には亀屋本店を名乗る土産物屋がある。亀屋本店といえば鯛せんべいで著名な菓子メーカである。直営店があるという記憶はあまりないしどちらかといえば小湊であって館山ではないのだが、時間が余っていたので入った。一部40%引きを強調するPOPが並ぶが鯛せんべいは見事に枠から外れていた。癪だが筆者が好きなのは鯛せんべいなので別段安くはなかったが大人買いした。

ちなみに直営店だったらしい。道理で普段見ないプレーン以外のテイストが並んでいたわけだ。ここで筆者は鯛せんべいのフレーバーとしてバター、チョコレート、桜庭風味、抹茶みるくなどがあることを初めて知った。

メシでも調達しようと思っていたのだが、案外そそられるメシがなかったので見送って南端に賭けることにした。まあ観光地なので、ハズれようが食いっぱぐれることはあるまい。

結局鯛せんべいを買い込んだだけで館山散策を切り上げ、今でこそ珍しいJRバス関東の自動車線に乗った。

 

f:id:Ithikawa:20210309234055j:plain

ここが知る人ぞ知る関東地方最南端の駅、安房白浜駅である。
ちなみに駅前にはスーパーの廃墟がある。そういうところなのである。

自動車駅なるものが全国的に姿を消しつつある昨今も変わらず駅を名乗り続ける、なんとも図太い神経を持った駅だ。ちなみに筆者は駅舎が変わったら自動車駅から別の名前に変わるんだろうなと勝手に思っていたので、ピカピカの駅舎に駅とデカデカ書かれている姿を見て腰を抜かしてしまった。

この駅からは東京までの高速バスや、地場の日東交通の一般路線などが出ており、そこそこの規模のターミナルとなっている。きれいな駅舎の中には待合室があり、一角には切符を売ってくれるカウンターがあるようなのだが、人気もなく、シャッターも降りていた。張り紙曰く、緊急事態宣言下で窓口を締めているとのことである。

駅舎には特にこれ以上見れるものもないので、南端を目指した。

 

南端に行く途中に、館山でも見かけたおどやなるスーパーを見かけた。この地域では有力なのかもしれない。最悪食いっぱぐれないという保険を見つけ、臆することなくあるき続けた。

所々に巨大なホテルが見える。
改めてここが観光地なのだと理解させられる。

でかい公園を突破すると、急に土産物屋が増える。
ここが房総の南端、野島崎らしい。

南側の一角がロータリー状になっており、ロータリーを囲うように土産物屋や飲食店がのきを連ねている。見ればどこもがら空きで、昨今の情勢というものを嫌でも思わせる。特に食いたいものはなかったのだが、手近なところということで、おばちゃんが熱心に客引きをしていた店にホイホイ入ってしまうのであった。

客引きをする店はろくでもない店というイメージはある。だいたいは合っている。しかし多分今回は違うのだろう。何せ客引き以外することなさそうな人の入り用なのだ。おばちゃんに連れられ店の中に入ったが、どこに座ればいいのか空席だらけで若干迷ったくらいである。それくらい人がいなかった。

 

f:id:Ithikawa:20210310000035j:plain

先客を追い上げるペースでメシを描き込んで南端に向かった。

南端は人がちょっといた。ちょっとである。写り込まないタイミングを見計らう必要がない程度の人だ。

f:id:Ithikawa:20210310000233j:plain

南の方を見ると無限に海が広がっている。

聡明な読者諸兄の皆様はおわかりかと思うが、この写真は別に南を向いて撮っているわけではない。聡明であるからには矢張り南を向けない理由もおわかりだろう。

ド逆光なのだ。

南端に来ており、南中にほど近い時刻に南を向くというのがいかに無謀な行為なのかはおわかりいただけるかと思う。目が死ぬ。多分センサも死ぬ。なので実のところそこまで南を向いてよく見ていたわけではない。

大体内房では、向こう岸が見えるのである。然しここは向こう岸などない。それだけでも十分果てまで来た気がしてくるというものだ。この向こうの果てまで何も見えないという情景は、東京湾の近傍では中々得難いものなのだ。

 一通り見て、推測したとおりに野島崎灯台の一般公開が中止していたのでそそくさと駅に戻った。大体14時を回った頃だった。

戻る途中に時刻表を確認したところ、10分前にJRバスが出ていた。

無である。

完全に無だ。

考えても見てほしい、駅前はスーパーの廃墟が広がる土地である。ロケーションが山陰本線の特急停車駅と大差ない。控えめに言って時間をつぶす術に乏しいのだ。これは中々厳しい。

なにか策は無いのかと日東交通の時刻表を探した。

日東交通は千倉に抜けるバスが有る。次のJRバスは15:15で、千倉経由のバスは14:40なので確かにこちらのほうが出発は早い。今のペースであれば待ち時間を30分程度に抑えることができそうだ。然し30分も長い。

安房白浜駅の時刻表ページには千倉経由館山行きの館山・千倉・白浜線の他にも豊房線なる路線のページがある。あまり期待してはいないが、こちらも確認した。

行き先は眺尾橋経由の館山駅で、JRバスとあんまり変わらない。厳密には若干経由する道路は違うのだろうが、大まかなコース取りはどちらも同じのようだ。

こちらは14:15にバスがあった。

待ち時間はおよそ15分。悪くない塩梅だ。

 

f:id:Ithikawa:20210310001614j:plain

ちなみに、運賃はJRバスよりも10円やすかった。

3時間ぶりくらいに館山駅に戻ってきたが、特にやることもなく、帰るにも早いので一先ず鴨川を目指した。

f:id:Ithikawa:20210310001818j:plain

鴨川は特に駅前に見どころはない。

強いてあげるなら裏手のイオンだろう。実は筆者は存在は認知していたが入ったことがなかった。折返しの列車まで時間があったので、軽くイオンを徘徊した。

地方のイオンは中々侮れない場合は多い。結構地場のものも取り扱ってくれているのだ。イオンリカーで土地の酒とされている酒を手に入れ、駅に戻った。

 

f:id:Ithikawa:20210310002232j:plain

 

ここからは基本的に無である。

何せ列車は千葉行きだ。ウトウトしつつ、車窓を眺めつつでもなんとでもなるのだ。

決めなければならないことは精々東京湾フェリーに乗って帰るべきかどうかくらい。

東京湾フェリーに乗らなければ延々と無を味わう羽目になるし、東京湾フェリーに乗ると夜間の航行でマジモンの無を摂取しおまけに帰宅が遅れるという悲しみを背負う羽目になる。

 

f:id:Ithikawa:20210310002506j:plain

18切符は降りられるのが最大のメリット。降りなければ意味がない。

ちなみに待たずに乗れるとか書いているが今は減便ダイヤなので大嘘である。長いと1時間半位待つ。

この駅で撮っている時点で大概暗いが、これでも出港まではやや余裕を持って行動している。つまるところ、真っ暗闇の中を航行することになるのである。

f:id:Ithikawa:20210310002653j:plain

これは出向前に撮っている一枚なのだが暗さがよく分かると思う。暗い。そして寒い。関東地方ではこの時分ではまだまだ明かりが煌々と瞬くイメージがあるがそんなことはない。何分光源が無いのだ。めちゃくちゃに暗い。おかげか晴れると星空がよく見えるのでぜひ晴れを狙ってほしい。ちなみにこの日は曇天だった。

出港するとデッキに風が流れる。ほぼ冬の日没後なだけありごっつ寒い。寒すぎて流石に一つ下の屋根のあるデッキに避難し、更によどみ点を探してそこに退避せざるを得なかった。

遠く空が白くなっているあたりが東京なのだろうか。白色の閃光を放つ灯台を見てはあれが観音崎灯台かなどとと黒い海を遠巻きに眺めていた。

ぼうっとしているとすぐに久里浜港に着く。40分の航路などそんなもんだ。

このあとは、京急に乗り、JRに乗り、面白いのか詰まらないのかよくわからない経路で帰宅した。