旭駅本屋

SNSが普及しきった今日において、人々はなぜブログを使うのであろうか。

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春夏秋冬

春はあけぼので一円玉のように白く輝くヘッドマークを掲げたEF64を浮かべるのはでんぐるまひろしの類くらいであろう。
どんなことに季節を感じるかは人それぞれではあるのだが、移動オタクともなると季節毎に行きたくなってくる場所というものが幾らか出てくるものだと思う。

今回は、個人的に毎年のように行っている地域を紹介していきたいと思う。

 

夏は房総。
寂れた港町に人の疎らな海水浴場を眺めながら、ボックスシートに腰掛け街を眺めるのはとても良い。
金も時間もないから日帰りで近場と考えると、房総は極めて魅力的な行き先である。18券でも普通乗車券でも数千円もしない。
単線区間の交換待ちで、ガランガランと床下から音を鳴らしながら、対して冷えてもいない車内の空気が、じんわりと生暖かい新鮮な空気に入れ替わる。駅舎はボロい木造が殆どで、駅から少し離れたところに漁港があり、こじんまりとした商店街があるものだ。国道は細く、車通りは多く、反面ガソリンスタンドはところどころ潰れて居抜きの不動産屋なんかに変わっている。
千葉は山が低いなんて言われているものの地形は急峻で、人の住みやすい土地はだいたい人が住んでいる。
フェリーで久里浜を出て、金谷についたら適当に電車に乗って、小湊を目指すも良し、最南端を目指すも良し、どこへ行っても寂れていて、どこへ行っても程々に人がいる。なんとなく遠くへ来た感じがありつつも、それでいて海の向こう側には見慣れた煙突が立ち並んでいる。
この微妙さが本当に良い。何度行っても良いものだし、だからこそ毎年のように行きたくなるものなのだ。

秋はなんとなくだが中央本線に乗りたくなる。高尾を超えて、相模湖の辺りから大月の辺りまでの山の中はよい。ところどころ紅く染まる広葉樹林が広がり、特急がバンバン走る中でトロトロとコンプレッサーの音を谷間に響かせながら進んでゆく115はとても良い。草臥れたボックスシートにもたれかかり、適当な駅で適当に降りて、駅前はどこも程々に寂れていて、降りる乗客も疎らで、適当にふらついて次の電車までゆっくり待つ。特急が何本か走り去り、やっと乗る列車が来たと乗り込むのもよいものだ。ホリデーパスは大月までだが、一歩足を伸ばして甲府盆地まで行くのもよい。

冬はやっぱり北海道に行きたくなる。冬こそ北海道。間違いない
新千歳空港の駅のホームに降り立つなり質の違う寒さを浴びる。凍えた窓やドアを見て、ああ北海道に来たんだとなあとつくづく実感する。寒々とした水色の壁紙のデッキに身を預け、駅ごとに入る雪と寒気にやられながら、真っ白な原野や、雪で白く染まった町並み眺めるのはとても良い。豊平川を渡り、ゆっくりと高層ビルが生えてくる様を見て列車を降りる。札幌駅のホームは実をいうとそこまで寒くはない。何より風もそんなに入ってこないし雪もない。もこもこに外套を着込んだ立ち番は見るからに暖かそうだ。三点チャイムを聞きながらホームを降りるとコンコースがある。残念ながらこちらは想像の数倍寒い。ホームとの仕切りが何一つないので屋内感を出してくる割には寒い。ストーブガン焚きなのも多分寒いからだと思う。
手近なセコマに入りホットシェフを買っても、少し歩けばただの弁当。視界は時折白く染まり、凍結した歩道は幾度も転びそうになり、5分も歩けば肩から上は白くなる。博物館も閉まり、観光地は軒並み開店休業モードで、やっているのはスキー場と流氷ツアーくらい。普通はオフシーズンといって差し支えない冬の北海道だが、やはり何度来てもまた来たくなるのだ。
オフシーズンなので人影が疎らなのもとても良い。しかし何よりも、過酷な気候を物ともせずに走る列車は、見ていても乗っていても頼もしいもので、何度でも見たくもなるものなのだ。